米コネチカット州のハートフォード(Hartford)市、Constellation Energy社、Bloom Energy社は4月25日、燃料電池によるマイクログリッドが完成したと発表した(図)。同市内のパークビル(Parkville)地区で、公共施設や事業者などにとって、コスト削減や非常時の電力供給などの利点があるという。

米コネチカット州のハートフォード市が導入した800kWの燃料電池マイクログリッドの概要図
米コネチカット州のハートフォード市が導入した800kWの燃料電池マイクログリッドの概要図
(出所:City of Hartford)
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 通常時の運用中には、出力800kWのマイクログリッドとしてパークビル小学校、図書館の支所、パークビル・シニアセンター、チャーターオーク健康管理センターが使用する電力の100%を供給する。

 商用の電力網が停電となった場合、同マイクログリッドのシステムはそれらの施設に加えて、近隣のガソリンスタンドと食料品店にも緊急用の電力を供給する。これによって、周辺住民がこれらの店舗で必需品を購入できるという。余剰電力は、地元のバルクレー高校(Bulkeley High School)ほか4校の電気料金を低減するために活用する。

 Constellation Energyは、同プロジェクトでマイクログリッド・システムのEPC(設計・調達・施工)サービスを担当しており、稼働後の運用も担う。Bloom Energyは、燃料電池「Bloom Energy Server」を供給した。15年間の電力購入契約(PPA)により、ハートフォード市は、燃料電池で発電した電力を市場価格かそれより安い価格でConstellation Energy社から買い取る。

太陽光発電は採用せず

 コネチカット州では初めての官民連携プロジェクトであり、同州エネルギーおよび環境保護局(DEEP)の「マイクログリッド助成プログラム」を活用した。また、同州の「低排出量再生可能エネルギー・クレジット・プログラム」の一環として、長期契約に基づいて環境価値クレジットを地元の電力事業者に売ることでも収益が得られるという。

 ハートフォード市は、緊急時の電力確保に加え、環境や経済の両面でメリットがあることから、「今回と同様のマイクログリッドを市内の他の地域でも建築したい」としている。

 太陽光発電は採用していないものの、天然ガスを燃料とするため、石炭や石油火力に比べると相対的に温室効果ガスの排出は少ない。ただ、さらに温室効果ガスを減らすためには太陽光などの再生可能エネルギーの導入が必要になる。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究者らが4月に発表した研究によると、確固とした再エネ政策を打ち出さない場合、化石燃料に基づくマイクログリッドが増加する可能性が高いと指摘している。

 燃料電池やガスエンジンなどの天然ガスを燃料とした分散電源を基本とするマイクログリッドでも、相対的に温室効果ガスの削減は可能だが、根本的な温暖化対策としては限界がある。「高い再エネ導入比率を目標とするなど、本質的な対策に誘導することが必要になる」とUCSDの研究者らは指摘している。