NEDOと早稲田大学、エネルギー総合工学研究所らは、天候の影響を受けやすい風力発電の出力調整用に、圧縮空気エネルギー貯蔵システムを完成し、2017年4月20日から実証試験を開始した(関連記事)。また4月27日にはこの施設の開所式が行われ、システムを報道陣に公開した。

河津圧縮空気エネルギー貯蔵試験所
河津圧縮空気エネルギー貯蔵試験所
山あいを切り開いて建設。奥に空気タンクが見える
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 圧縮空気を利用した大型のエネルギー貯蔵システムは珍しく、大規模なものは世界的にも数例しかないようだ。将来、再生可能エネルギーが増えて行くと、発電施設の立地や規模、出力特性などに合わせた、様々なエネルギー貯蔵技術が必要になる可能性がある。NEDOらは、圧縮空気技術には、既存のNAS電池やLiイオン2次電池にはないメリットがあるとみて開発を進めてきた。

電池より安全でクリーン

 現状、エネルギー貯蔵システムの主力技術である2次電池のシステムには、コストが高い、寿命が短い(劣化する)、廃棄物処理にコストがかかる、などの問題点がある。また可燃性の材料が使われるので火災の危険性があり、十分な管理が必要である。

 一方、圧縮空気システムはほとんどが既存の技術だけで成り立ち、高価な部品や危険な材料は使われない。圧縮空気の利点を整理すると、1)低コストの可能性、2)長寿命、3)廃棄が楽、4)枯れた技術で信頼性が高い、5)環境に優しい、ことなどだと言う(エネルギー総合工学研究所、研究理事の蓮池宏氏)。

 なお、このシステムでは空気を圧縮するとき(充電)に発生する熱を蓄熱オイルに集めて、空気の膨張時(放電)に再利用している。このオイルが唯一の可燃物だが、最高温度は150℃程度と低く、使用量も少ないとのこと。