自治医科大学 内科学講座循環器内科学部門教授の苅尾七臣氏の研究グループは、エー・アンド・デイとの産学共同研究により、環境生活信号と生体信号を同時に時系列評価できるマルチセンサー携帯型自動血圧計TM-2441を開発した。個人の環境・生活リズムを考慮した循環器疾患の個別治療への利活用が可能になるという。

 環境生活信号としては気温・気圧・高感度身体活動、生体信号としては血圧・心拍・脈波波形を同時に時系列評価できる。血圧測定に加え体動を検知する加速度センサー、環境情報として気温センサーと気圧センサーを実装している。白衣性高血圧、仮面高血圧、早朝高血圧などの評価が可能な24時間血圧計としてだけでなく、家庭用血圧計、診察室血圧計としても使用できる。

 苅尾氏らの研究グループは2009年1月より、「日本人における自由行動下血圧追跡研究(Japan Ambulatory Blood Pressure Prospective Study:JAMP研究)」を開始。ABPMデータバンク(全国の心血管ハイリスク患者7200人を対象としたデータバンク)で測定した24時間血圧と血圧変動性が循環器疾患のリスクであることを明らかにし、さらに血圧変動の一要因として生活環境因子に関連することを示した。今回の共同研究により、日常生活における個々のリスク因子を検出し、それぞれに最適な診断と治療につなげることが可能な、生活環境因子を同時に時系列測定できる多機能携帯型自動血圧計の開発に至った。

 今後、内閣府による革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」において、この血圧計を活用し、ビッグデータに基づく臨床エビデンス構築を目指す(関連記事)。また、個人の血圧情報に加え、同時に多種の環境時系列データを自動取得するシステムを構築し、取得したデータよって個人の循環器疾患イベントを予測するシミュレーターアルゴリズムの基礎開発を進めていくという。