ハンファQセルズのイェルク・ミュラー(Jörg Müller)氏
ハンファQセルズのイェルク・ミュラー(Jörg Müller)氏
(出所:日経BP)

ハンファQセルズは、「PERC」(Passivated Emitter and Rear Cell:裏面不動態型セル)技術を活用し、多結晶シリコン型太陽光パネルで変換効率19.5%を出すなど、PERC構造のパネルでの効率アップに取り組んできた。ドイツ本社で研究・開発部門を率いるイェルク・ミュラー(Jörg Müller)氏に聞いた。

――入射した太陽光をセル(発電素子)内に閉じ込める「PERC」技術の改良を進め、新製品を発表していますね。

ミュラー氏 固定価格買取制度(FIT)の買取価格が下がり、さらに将来、FITが終了した後でも、太陽光発電を継続的に普及させるには、太陽光パネルのさらなる高効率化と低コストの両方を同時に進める必要があります。

 太陽電池の効率を上げる技術には、ヘテロ構造やバックコンタクト構造など、複雑な手法もあり、ハンファQセルズでも研究しています。ただ、現時点で、効率とコストを最もバランスよく両立できるのが、PERCと判断しています。

 単結晶シリコン型にPERC技術を導入することで、さらに変換効率が上がる可能性があります。

――PERC型パネルは、多結晶シリコン型をベースにすることが多いように思います。

ミュラー氏 実は、一般的なPERC構造のパネルでは、初期にセル内部の構造変化によって出力が低下する「LID現象」が見られます。これはセル内のボロンが酸素と結合して不安定な状態になり、電子を取り込む現象です。そのため電子の流れが妨げられ、出力低下の原因になります。

 単結晶シリコン型セルには、多結晶シリコンよりも酸素分子が多く、KID現象が起きやすいため、これまでPERC型セルは、他社も含め、主に多結晶シリコンをベースに製品化されてきました。

――単結晶シリコンセルでも、LID現象を克服できたのですか。

ミュラー氏 こうした劣化メカニズムに関する解明が進み、ある種の添加物を配合することによって、酸素の結合を抑制できる「アンチLID(Anti-LID)」技術を確立できました。「Q.ANTUMセル」という名称で、他社のPERC型パネルと差別化しているのは、こうした新技術をアピールする意味もあります。