2016年4月1日、電力小売りの「全面自由化」が始まった。約50社が家庭向けへの参入を表明し、早くも大乱戦の様相だ。ところが、新規参入企業の営業現場は思わぬ事態の発生に、急場の対応を迫られている。特に最も競争が激しい東京電力エリアでは、肝心の電力サービスの切り替え(スイッチング)が、想定以上に遅れそうなのだ。

 「どんなに遅れても4月中にはスイッチングを完了させてくれと東電にお願いしている」。ある新規参入企業幹部は、焦りを隠さない。焦りの理由は、指摘されていたスマートメーターの設置の遅れだけではない。

 東電は、4月1日までにスイッチングを希望している世帯のうち、10万世帯のスマートメーター切り替え工事が間に合わないことを明らかにしている。当初は、3月末までの先行申し込み分については、従来からの機械式メーターからスマートメーターに切り替えを完了し、4月1日から順次、スイッチングする計画だった。

 だが、スマートメーターの導入は思いのほか難航し、2015年末には早くも設置計画の遅れが顕在化していた。このため、多くの新規事業者が「スマートメーターの遅れは織り込み済み」という。東電自身も、スマートメーターへの切り替えが完了していない場合は、現行のメーターのままスイッチングする方針を示している。

 この場合、東電の検針員が各戸を回ってメーター値を読み取る「検針日」がスイッチング日になる。