歯科医療機器大手のモリタ(大阪府吹田市)は、ソフトバンクグループのシステム開発会社リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ(東京・港)と共同で開発したAR(強化現実)技術を使った歯科治療支援システム「WK2 Project」の詳細を明らかにした。

WK2 Projectのシステムでインプラント治療をデモする歯科医師の芳本岳氏
WK2 Projectのシステムでインプラント治療をデモする歯科医師の芳本岳氏
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 モリタは同システムを3月17日に発表(関連記事:MR技術を活用して歯科治療トレーニング)。独ケルンで2017年3月21~25日に開催された歯科業界の展示会「第37回ケルン国際デンタルショー」の同社ブースでデモ展示した。「歯科業務の未来を見せていると会場で一二を争う人気展示になった」(モリタ商品企画戦略室 関岡 利孝氏)という。2年後をめどに、歯科医を養成する大学や歯科技工士の専門学校などにおける教育・研修用途での実用化を目指す。

 WK2 Projectは、歯科医師がVRヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着し、HMDに装備したステレオカメラで撮影した目の前の患者のリアルタイム映像に、X線検査などから得た診断情報を複合させて表示し、治療を支援するシステム。歯科医師 窪田努氏(クボタ歯科、京都市)と芳本岳氏(GAKU DENTAL CLINIC、京都府宇治市)のアイデアと監修の元、モリタとリアライズが開発した。

歯科医師の芳本岳氏。インプラントのコンピュータ支援手術(CAS)で国内屈指の実績を持っている
歯科医師の芳本岳氏。インプラントのコンピュータ支援手術(CAS)で国内屈指の実績を持っている
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モリタ代表取締役社長の森田晴夫氏
モリタ代表取締役社長の森田晴夫氏
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 歯科治療では、個々の歯牙と顎骨格との位置関係、血管や神経網の位置、歯牙表面のエナメル層の厚みなどを正確に把握して治療に当たる必要がある。X線CTスキャン(断層撮影)などにより、これらを立体的に把握する手法は確立しているが、目の前の患者に適用するには「両方を交互に見て歯科医が頭の中で情報を組み立てて推測するしかなかった」(芳本氏)