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HOMEエレクトロニクス > 砂漠の空気が“水源”に、超多孔質材料と太陽光で実現へ

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砂漠の空気が“水源”に、超多孔質材料と太陽光で実現へ

  • 野澤 哲生
  • 2017/04/20 17:04
  • 1/1ページ
開発した「Solar-assisted Water Harvester」
上の黒いパネルがMOF層を形成したガラス板。その下の茶色の凝縮器に多数の水滴が付いている。MOF層の寸法は5cm×5cm×0.31cm (写真:MIT photo from laboratory of Evelyn Wang)
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MOF-801の結晶構造
青い部分がZrとその錯体。黒い点は炭素原子、赤い点が酸素原子。黄色い球状の部分は空隙で、吸着した水の”タンク”になる。(図:UC Berkeley and Berkeley Lab)
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 世界の水ビジネスや農業が大きく変わる可能性が出てきた。

 米Massachusetts Institute of Technology(MIT)Mechanical engineering Associate ProfessorであるEvelyn Wang氏と米University of California,Berkeley校のProfessor of ChemistryのOmar Yaghi氏らの研究チームは、最近開発した水を大量に吸着する超多孔質材料「MOF-801」を用いることで、相対湿度(以下、湿度)が20%以下の空気からも、1kgの材料で1日2.8Lの水を“収穫”できるシステム「Solar-assisted Water Harvester」を開発したと発表した(MITの発表資料、学術誌「Science」の論文)。

 収穫に必要なエネルギーは太陽光のみで、外部の電力や燃料を必要としない。太陽光発電ならぬ、「太陽光で空気から水を絞り出す」技術といえる。砂漠の平均湿度は20%前後。今回のシステムでは、最小で湿度約10%の空気からも一定の水を収穫できるため、砂漠や乾燥地域、離島などでの飲料水や農業用の水の確保問題が解決する可能性がある。一般家庭でも災害時などで水道に代わる水の確保手段になりそうだ。

20年超かけて材料を開発

 この超多孔質材料は、「金属有機構造体(Metal Organic Frameworks:MOF)」と呼ばれる結晶の1つ。今回の研究リーダーの一人であるYaghi氏が研究を牽引し、1990年代から2万種類以上を開発してきた。水や二酸化炭素、あるいはさまざまなガスの吸着性が高いことで知られる。最近は、金属材料にジルコニウム(Zr)を用いたMOFが特に高い水の吸着性を示すことで脚光を浴びている。

 今回、Yaghi氏らが用いたMOF-801もその1つで、構造式は「Zr6O4(OH)4(fumarate)6」となる(fumarateはフマル酸)。結晶内にある大きな空隙に、水を大量に貯めこむとする。

 MOF-801の特徴は水の吸着性や保水性の高さだけではない。温度によってその保水性が大きく変化することや、室温(25℃)では湿度約10%という非常に低い湿度でも高い吸着性や保水性を備えることも大きな特徴だ。既存の水の吸着材料の多くは湿度が40%以上でなければ水蒸気の吸着性が低い。これまで吸着可能な湿度が最も低かったのはYaghi氏らが2014年に開発した「MOF-841」だが、湿度約25%が限界だった。

太陽光による温度の上下で水を収穫

 水を収穫する原理は、MOFの温度で保水性が大きく変換する性質を利用するもので、「デシカント(乾燥剤)式」の除湿機と同じである。

 具体的には、MOF-801は25℃では湿度約10%以上の空気中の水蒸気を大量に吸着する。ところが、温度が65℃超になると吸着した水の保水能力が大幅に低下し、空気中などに吐き出してしまう。

 今回開発したシステムでは、このMOFを塗布して焼結したガラス板をまず25℃前後の空気に触れさせて水蒸気を吸着させる。次に、それに太陽光を1~4時間照射させると、MOFの温度が66℃前後に上昇する。この結果、MOFは、吸着した水分を再び水蒸気の形で吐き出す。吐き出された水蒸気は、放熱器とつながった「凝集器(condenser)」上で結露させ、それを収穫する。こうした太陽光による自然な温度の上下だけで、1日2L前後/kgの水が得られるという。

 ただし、MITが同大学の屋上で水の収穫実験をした際には、放熱器にペルチェ素子を用いて、放熱器を気温よりやや低い一定温度に保った。しかし、論文では「実際の利用時には、アクティブな冷却は一切不要」としている。

 市販されているデシカント式除湿機は、MOFではなく、乾燥剤のシリカゲルやゼオライト(沸石)を用いているが、温度を上下させて水の吸着と脱吸着をしている点は同じである。ただし、電力でヒーターやファン、モーターを駆動している。また、シリカゲルやゼオライトでは、水蒸気を吸着できる最小湿度が高く、日本の梅雨時などの高湿度の空気の除湿はできても、乾燥地域での水確保用途には利用できなかった。

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