スイス・ソーラーインパルス(Solar Impulse)社の共同設立者兼CEO(最高経営責任者)のアンドレ・ボルシュベルグ(André Borschberg)氏は、同氏を含むグループが電気駆動による航空技術の研究や開発を行う新プロジェクト「H55」を開始したと発表した。

 「ソーラーインパルス」プロジェクトは、化石燃料を使わず、太陽光だけを動力源とする飛行機で世界一周を目指し、実際に達成した。ボルシュベルグ氏と冒険家のベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏を中心として、2009年にプロジェクトが開始した。

 ソーラーインパルスでは、現在までに一人乗りの飛行機2機を開発した。2014年に完成した2機目の「ソーラーインパルス2」によって、2015年3月から2016年7月までの期間で何度かの飛行に分けて世界一周を成し遂げている(関連記事1)(関連記事2)。

 今回発表したH55は、ソーラーインパルスからのスピンオフである。同プロジェクトで培った電気による航空技術をさらに推し進め、航空機による輸送や移動をさらにクリーンで、静かで、安全で安価なものとすることを目指す。

 このために、H55ではエネルギー源から始まる飛行機の推進系統、電池の制御系や操縦士とのインターフェースなどを含む、あらゆる制御系のすべてにフォーカスするという。

 H55では既に「aEro1(エアロワン)」と呼ぶ実証用の機体を開発済みである(図)。aEro1は、電池の持続上限による連続飛行時間が1時間を超えており、これまでに合計50時間以上の飛行実績があるとしている。

H55が開発した電動飛行機「aEro1」
H55が開発した電動飛行機「aEro1」
(出所:H55)
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 H55では、ボルシュベルグ氏を始めとしてソーラーインパルスのメンバーを中心とした5人が共同設立者として名を連ねているが、ピカール氏は参加していない。

 ピカール氏は、ソーラーインパルスという歴史的な偉業に関するメッセージを発信し続けるとともに、最近「World Alliance for Efficient Solutions」というクリーンエネルギー関連のイニシアチブを立ち上げたという。両者は今後も、提携関係を維持していくとしている。

 H55プロジェクトの開始にあたってボルシュベルグ氏は、「15年前にソーラーインパルスを始めた時、電気による飛行は空想のようなものだった。今日では、航空業界では主要な開発テーマとなっており、多くのベンチャー企業や新規参入者をひきつけている。電気による航空技術は、間違いなく航空産業を劇的に変革させるだろう」とのコメントを公表している。