アーサー・D・リトル・ジャパンの鈴木裕人氏
図1 アーサー・D・リトル・ジャパンの鈴木裕人氏
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日米欧における自動運転の普及シナリオ
図2 日米欧における自動運転の普及シナリオ
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 「都市構造や交通インフラなどの違いを考慮して、日本に適した自動運転の普及シナリオを描く必要がある」──。アーサー・D・リトル・ジャパン(ADLジャパン)パートナーの鈴木裕人氏は、日経BP社が2016年4月11日に東京・港区内のホテルで開催した「自動車未来サミット2016 Spring」の講演でこのように述べた(図1)。

 自動運転については日米欧で実用化に向けた取り組みが加速しているが、鈴木氏は「その導入シナリオは各国で異なる経路をたどる可能性が高い」と見る。日本は人口密度が極めて高く、都市構造は米国の「スプロール型」に近い。スプロール型の都市とは、自然発生的に生まれて発展してきたものである。

 交通モードについては、都市部は公共交通機関が中心の欧州に近く、地方は自家用車が中心の米国に近い。交通インフラは主に国や自治体が集中管理する公共財と、私有財が混在している。こうした社会構造の日本では、「自動運転の導入形態は都市と地方で異なってくる」と鈴木氏は予測する。

 具体的には、地方ではバスやトラックへの自動運転技術の導入が先行し、都市部では渋滞緩和や運転者の負担軽減を主な目的として、自家用車へのレベル3の自動運転技術の導入が進むと見る。レベル3の自動運転とは加減速や操舵などの制御の主体はシステムであり、クルマの周辺の監視は運転者が主体で行うが、一部の監視作業をシステムが分担するものである(図2)。