図 「クラリティフューエルセル」の開発責任者である本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員の清水潔氏
図 「クラリティフューエルセル」の開発責任者である本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員の清水潔氏
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 「環境性能に優れる燃料電池車(FCV)といえども、ユーザーがクルマに求める商品価値は変わらない」――。ホンダの新型燃料電池車(FCV)「クラリティフューエルセル」の開発責任者である本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員の清水潔氏は、日経BP社主催の「自動車未来サミット2016 Spring」(2016年4月11日)でこう述べた(図)。新型FCVの開発における、使い勝手の向上やコスト低減のための取り組みを紹介した。

 クラリティフューエルセルは燃料電池(FC)パワートレーンを小型化し、フロントフード下に収納することで5人乗りの室内空間を実現した。カー・ナビゲーション・システムやADAS(先進運転支援システム)、電動パワーシート、革製シートといった装備を標準搭載している。パワートレーンを小型化するために、FCセルの改良やSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の適用など新開発の技術を多く搭載した(関連記事)。

 同社がクルマの使い勝手に注力した背景には、先代車「FCXクラリティ」のユーザーから得た厳しい意見がある。当時は技術的に燃料電池(FC)スタックの小型化が難しく、センタートンネルに配置していたため乗員数が4人に限られていた。車両質量やコストを低減するため、装備や内装は簡素化していた。水素タンクの充填量も少なかったため、航続距離も短かった。

 そのため主力市場である北米のユーザーからは、「乗員定数の少なさ」「装備の不足」「短い航続距離」に不満が寄せられたという。清水氏は米国駐在中にユーザーから直接意見を聞くことで、魅力あるクルマづくりの重要性を痛感したという。