主要国における原発の均等化発電原価の比較。英国の原発のコストが89.5ポンド/MWhで最も高い
図1 主要国における原発の均等化発電原価の比較。英国の原発のコストが89.5ポンド/MWhで最も高い
(出所:Intergenerational Foundation)
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ヒンクリーポイントC(HPC)、陸上風力発電(OW)、太陽光発電(PV)の2023~2057年における行使価格の推移予測
図2 ヒンクリーポイントC(HPC)、陸上風力発電(OW)、太陽光発電(PV)の2023~2057年における行使価格の推移予測
(出所:Intergenerational Foundation)
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 英国のシンクタンクであるIntergenerational Foundation(IF)は4月5日、英国南西部のサマセット州で建設が計画されている「ヒンクリーポイント(Hinkley Point)C原子力発電所」を太陽光や風力発電など再生可能エネルギーによる電源で代替すれば最低300億から400億ポンドの節約になるとの調査結果を発表した。

 ヒンクリーポイントC原発は、安全性を大幅に高めた新型炉「欧州加圧水型炉(EPR)」を採用している。出力1600MW(1.6GW)のEPR2基で構成し、総出力は3200MW(3.2GW)となる見込み。仏EDFなどが建設を受託する予定となっており、2023年の稼働を目指している。

 英IFの調査では、ヒンクリーポイントC原発の建設コストが245億ポンドに上ると指摘、同原発が「地球上で最も高価な建築物」になるとしている。均等化発電原価では89.5ポンド/MWhとなり、国際的な比較でも英国の原発による発電コストが最も高くなるという(図1)。

 さらに、35年の運転期間中に陸上風力や太陽光と比較すると300~400億ポンドのコストが必要になるという。これには原発の運転によって生じる放射性廃棄物の処理費用が含まれていないため、さらに540~1320億ポンドが必要になるとする。

 一方、風力や太陽光発電では、いずれの再エネ技術でも納税者にとってより高い価値を与えるという。

 具体的には、英IFはエネルギー・気候変動省(DECC)や米ブルームバーグによる調査結果を引用し、ヒンクリーポイントC原発より太陽光発電や風力発電が低コストとなることを示している。

 低炭素電源を推進する英国の長期固定価格買取制度(FIT-CfD)では、ヒンクリーポイントCの行使価格(strike price)は2023年から2057年まで常に92.5ポンド/MWhとなる。これに対し、風力(陸上)発電は同71.06ポンド/MWh以下に、太陽光が同61.17ポンド/MWh以下となる。いずれも年々下落するため、ヒンクリーポイントC原発のコストとの差が年々拡大することが分かる(図2)。