太陽光の波長と光エネルギーの関係
太陽光の波長と光エネルギーの関係
(出所:岡山大学)
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カーボンナノチューブ光触媒の構造と反応
カーボンナノチューブ光触媒の構造と反応
(出所:岡山大学)
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 岡山大学と山口大学、東京理科大学らの共同研究グループは3月10日、カーボンナノチューブを光吸収材料に用いたエネルギー変換技術により、水から水素を効率的に取り出すことに成功したと発表した。

 カーボンナノチューブは、従来の光触媒技術では利用できなかった赤色光~近赤外光(波長600nm~1300nm)を吸収できることから、太陽光エネルギーの変換効率の大幅な向上が見込まれるという。

 太陽光と光触媒を利用した水分解による「CO2フリー水素」の製造の鍵となる太陽光エネルギー変換効率は、光触媒の活性波長によって決定される。例えば、活性波長が400nm以下の光触媒では太陽光エネルギーのわずか2%しか利用できないのに対し、600nmまで拡げると16%まで、800nmまで拡げると32%まで利用できる。

 カーボンナノチューブは、可視~近赤外領域に吸収帯を持つ光吸収材料であることが発見当初から分かっていたが、励起子束縛エネルギーが大きいため光触媒への応用は困難とされていた。今回、カーボンナノチューブの光触媒が実証されたことで、変換効率50%を達成するブレークスルー技術になり得るという。

 電気と共に、水素をエネルギー媒体として利用することで、低炭素型の社会インフラを構築する動きが始まっている。しかし、その基盤技術となるCO2を排出しない水素製造法については、決め手になる効率的な技術がないのが現状だ。カーボンナノチューブ光触媒は、有望技術の1つとして期待される。

 今回の研究の一部は、岡山県特別電源所在県科学技術振興事業の研究委託、JSPS科研費15H03519の助成を受けて実施された。研究成果は、英国の科学雑誌「Scientific Reports」に2017年3月6日掲載された。