米国の非営利団体(NPO)Vote Solarと太陽光エネルギー産業協会(SEIA)は3月31日、マサチューセッツ州における太陽光の余剰買取制度における接続上限(net metering cap)の引き上げと「Solar Renewable Energy Credit(SREC)」制度の改革が行われていないために、太陽光発電プロジェクト500件(総投資額で6億1700万ドル相当)以上の建設が停止し、州内の市や町が年間320万ドルの税収を失っている、との調査結果を発表した。

 両団体は、州政府が適切な対策を講じない限り同州で停滞または中止となる太陽光プロジェクトの数と経済的損失が増加すると、警鐘を鳴らしている。

 Vote Solarの北東地域マネージャーであるSean Garren氏は、「マサチューセッツ州の住民は全米でも最も高い電気代を負担している。手頃な価格の太陽光発電によって、家庭や学校、公的機関などはエネルギー費用を適切に管理すると同時に、地域経済に投資することが可能になる」と述べている。

 マサチューセッツ州では、National Grid社の供給地域内で余剰買取制度による太陽光電力の接続容量が上限に達して以来、既に一年が経過している。つい最近ではUnitil社とEversource Energy社の供給地域においても接続上限に到達したため、州の半分以上の地域で太陽光の成長が伸び悩んでいるという。

 今回の調査では、住宅用の太陽光発電以外の問題点も指摘している。具体的には、コミュニティ型メガソーラー(大規模太陽光発電所)などの建設計画に影響が出ていることだ。

 例えば、同州ビレリカ(Billerica)では、廃棄物埋め立て処分場の跡地を活用し、市と住民の利益となる6MWのメガソーラーを建設する計画を進めていたが、この計画も接続上限の影響を受け、プロジェクトの停滞を余儀なくされているという。

 エームズベリー(Amesbury)、アマースト(Amherst)、チェルムズフォード(Chelmsford)、ヘイブリル(Haverhill)、ニーダム(Needham)など多くの市や町がコミュニティ共有型の太陽光発電の恩恵を享受している。一方、数十以上の市町が接続上限のために太陽光発電の建設を進められない状況となっている。

 コストの低下や需要の増加、州政府の強力な政策によって、マサチューセッツ州の太陽光発電産業は過去2~3年で飛躍的な成長を遂げた。2015年に同州では286MWもの太陽光発電が導入された。この数字は、SEIAと米GTM Research社の調査によると全米で4位である。

 Vote Solarらの新しい報告書によると、マサチューセッツ州は低所得世帯に電力を供給する太陽光発電においても全米トップを誇るという。このことは、太陽光がますます購入しやすくなり、身近な存在となりつつあることを示している。

 同州で成長を続ける太陽光発電市場は、1万5000人以上の比較的、所得の高い地元雇用の創出にも貢献してきた。余剰買取制度の行き詰まりは、同州経済でかつて輝きを放っていた場所に影を落としている。

 3月初旬、州議会議員100人と32市町の首長が、同州の通信、公益事業およびエネルギー共同委員会に対して、州内で計画されている太陽光発電プロジェクトの阻害要因とならないよう余剰買取制度における接続上限の引き上げを要求した。

 その書簡では、電力の消費者が太陽光発電のために1ドル支払うごとに2.2ドルの利益が見込めるとの調査結果が強調されていたという。この結果は、「Massachusetts Net Metering & Solar Task Force」の調査で明らになったものだ。

 米国ではこれまでに全米の44州が余剰買取制度を採用したことで、太陽光発電が急速に普及してきた。ところが、変動幅の大きい太陽光が電力系統網に大量に接続されたため、マサチューセッツ州以外にもハワイ州やネバダ州などで余剰買取制度の接続上限に達して、連系が停止されたり、制限を課せられたりする事例が相次いでいる。