「原付(原動機付き自転車)以上、軽自動車未満」の乗り物として、過疎地や観光地の手軽な足、都市内の小口輸送などでの活用が期待されている超小型モビリティ。だが、その普及はあまり進んでいない。

 国土交通省は2016年3月22日に東京・有楽町の「東京国際フォーラム」で、「超小型モビリティシンポジウム~超小型モビリティの成果と可能性」と題した講演会を開いた。同講演会では「いち早く超小型モビリティ普及の環境整備を行ってほしい」と願うメーカーや自治体と、将来のビジョンを具体的に示さなかった国との姿勢の違いが明らかになった(関連記事)。

海外に活路を見いだす

 そんな中、一部のメーカーは海外にも活路を見出している。トヨタ自動車も日本で超小型モビリティの展開をにらみつつ、海外で実証実験を進めている。

 トヨタグループの超小型モビリティとしては、トヨタが開発した「i-ROAD」の他、トヨタ車体が生産する「コムス」がある。トヨタはこの2車種を使い、「ハーモ(Ha:mo)」の名称で、愛知県豊田市や東京都、沖縄県でシェアリングサービスを実施している。また東京では100人のモニターを募集し、i-ROADを1カ月間貸し出す「オープンロードプロジェクト」も行っている。

 このうちハーモについてはフランス南東部に位置するグルノーブルでも、2014年10月から3年間の予定で実証実験を行っている(図1)。ただし、その体制が日本のハーモとは異なることが、現地の取材で分かった。

図1 実証実験で使用する「i-ROAD」と「コムス」
図1 実証実験で使用する「i-ROAD」と「コムス」
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 トヨタとフランスの関わりは深い。北部のヴァランシエンヌで「ヴィッツ(現地名:Yaris)」などを生産しており、PSA Peugeot Citroenグループとの合弁で建設したチェコの工場では、「Aygo」という共同開発車を造っている。また、南フランスのニース近郊に位置するソフィア・アンティポリスには、デザインスタジオ「EDスクエア」を構えている。

 グルノーブルでの実証実験は、2010年から3年間フランス電力公社(EDF)とパートナーシップを結び、市販前のPHEV(プラグインハイブリッド車)「プリウスPHV」の実証実験を東部のストラスブールで行ったことがきっかけになった。

 このときの関係を生かし、新たにグルノーブルやグルノーブル都市圏共同体、現地でカーシェアリング事業を営む「シテリブ(Citelib)社」とともに、「シテリブbyハーモ」の名前でシェアリングサービスを展開している。

 このように、国のエネルギー政策を司る巨大組織や広域自治体とコンソーシアムを結成して実証実験を進めていることが、日本で展開するハーモと異なる点である。