国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は3月20日、「経済活動に負の影響を及ぼさず、全世界でのエネルギー起源CO2の排出量を2050年までに70%削減し、2060年までにはゼロにできる」との調査結果を明らかにした。

温度上昇を2℃未満に抑制するシナリオで、世界全体のエネルギーの供給と需要に関する投資額の平均値を示すグラフ
温度上昇を2℃未満に抑制するシナリオで、世界全体のエネルギーの供給と需要に関する投資額の平均値を示すグラフ
(出所: IRENA)
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 ドイツで開催された「ベルリン・エネルギー転換対話(Berlin Energy Transition Dialogue)」においてIRENAが発表した調査報告書「エネルギー転換のための視点:低炭素エネルギー転換のための投資ニーズ」によるもの。

 同調査では、主要20カ国(G20)を中心に世界全体で再生可能エネルギーと省エネルギーの導入をさらに推進することで、温度上昇を2℃未満に抑制し、気候変動で最も深刻なインパクトを回避するシナリオを提示している。

 IRENAのアドナン・アミン事務局長は、「パリ合意によって、気候変動に対する行動が国際的に決定された。その焦点は、グローバルなエネルギー・システムの脱炭素化でなければならない。それが温室効果ガス排出量の3分の2近くを占めているからだ」と述べた。

 エネルギー産業を脱炭素化するために必要となる投資は、2050年までにさらに約29兆ドル超と相当な額に上る一方、世界全体の国内総生産(GDP)に占める比率は0.4%に過ぎない。

 さらに、IRENAのマクロ経済分析では、成長を志向する適切な政策とあいまって、そういった投資が経済の刺激策になるとしている。具体的には、2050年にグローバルGDPを0.8%押し上げ、再エネ分野の雇用を創出し、化石燃料産業における雇用喪失を打ち消す。雇用は再エネ関連だけでなく、省エネ関連でも創出される。また、大気汚染が緩和されるため、環境面や健康面でのメリットを通じて、人類の幸福度が向上するという。

 世界全体では、2015年にエネルギー起源CO2が32Gt排出されたという。産業革命前の気温より2℃未満の上昇に温暖化を抑えるためには、この排出量を継続的に抑制し2050年までに9.5Gtまで減らす必要があるとしている。この削減分の90%は、再エネと省エネの推進を通して達成可能という。

 再エネは、現在世界全体の電源構成の24%、一次エネルギー供給では16%を占める。脱炭素化を実現するためには、2050年までに再エネを電源構成の80%、一次エネルギー供給の65%まで引き上げる必要があると指摘している。

 ベルリン・エネルギー転換対話では、IRENAだけでなく国際エネルギー機関(IEA)による調査結果も発表された。IEAの調査でも、脱炭素化に向けたシナリオを実現するための方策には、再エネや省エネに関してほぼ共通した方向性となっている。