高血圧などの理由で塩分の摂取を控えている人にも、塩味のする料理を楽しんでもらう――。そんな食事の革命を実現する「電気味覚フォーク」が誕生した。舌を電流で刺激することで、実際には無塩の料理に塩味を感じさせるものである。

電気味覚フォークを使って食事を楽しむ様子
電気味覚フォークを使って食事を楽しむ様子
[画像のクリックで拡大表示]

 開発したのは、いしい医院院長の石井貴士氏、東京大学大学院情報学環 暦本研究室 / 日本学術振興会 特別研究員PDの中村裕美氏、ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンの3者で構成する「NO SALT RESTAURANT 制作委員会」だ。

 電気味覚自体は、古くから存在する概念で、実際に医療現場で舌の細胞の状態を調べるために、電流を流す検査が行われてきたという。今回の電気味覚フォークは、これを「食」に応用するものだ。2016年4月10日には、事前応募制の試食会を開催する予定で、現在、公式サイトで参加者を募っている。

 電気味覚フォークは柄の部分と先の部分がそれぞれ電極になっていて、柄を手で握って食べ物をフォークで口へ運び、電流を流すボタンを親指で押すと、実際より強い塩味が感じられるというもの。電流の強弱は柄の端に設けたスイッチを使って、3段階で切り替えることができる。電源は二次電池。

電気味覚フォーク。「電気は塩味、酸味などの提示は得意。甘味やうま味はやや苦手」(中村氏)
電気味覚フォーク。「電気は塩味、酸味などの提示は得意。甘味やうま味はやや苦手」(中村氏)
[画像のクリックで拡大表示]

 フォークの製造コストは極端に高いわけではない。「私が独自に試作したときは、一般のフォークに約2000円分の部品を組み合わせて製作できた。量産すれば、コストはかなり抑えられそうだ」(中村氏)。ただ、口に入れるものだけに、ユーザーの抵抗感も予想されるとともに、適法性なども確認する必要があり、すぐにフォーク自体を販売する予定はないという。「4月の試食会のようなイベントを通じて、まずは少しずつ社会に浸透させていけたら」(同氏)。