ハイブリッド蓄電システムに採用された鉛蓄電池「LL1500-WS」
ハイブリッド蓄電システムに採用された鉛蓄電池「LL1500-WS」
(出所:日立化成)
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 日立化成は3月22日、アイルランドのオファリー州において、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー用の「ハイブリッド蓄電システム」向けに、576kWhの鉛蓄電池を納入したと発表した。米社製のフライホイール(弾み車)と組み合わせたハイブリッドシステムを構成する。

 アイルランドで電力系統関連事業に取り組んでいるSchwungrad Energie社が、リムリック大学と共同して系統安定化システムを開発した。2種類の蓄電装置を採用した「ハイブリッド」が特徴で、日立化成は、同システムに鉛蓄電池「LL1500-WS」を納入した。

 蓄電池の設置が完了し、ハイブリッド蓄電システムなどの機器で構成された系統安定化システムを、電力系統に接続する実証試験が3月14日から始まった。実証実験は、アイルランドSchwungrad Energie社が実施している。

 アイルランドは、電力供給に占める再エネ比率を、2020年までに40%に高める目標を掲げている。

 この実現に向けて、再エネ電源の大量導入時に問題となる出力変動を抑制し、電力の安定供給を実現する有効な手段の一つとして、充放電を繰り返す蓄電システムが必要になる。

 再エネ発電は、風や日照の状況により短周期、長周期で出力が変動し、電力網における安定的な電力供給に影響を与える。短周期の出力変動は、数分単位で出力が急峻に変化、系統の周波数や電圧を上下させる。長周期の出力変動は、数十分単位の出力変動を指す。こうした出力変動を平準化する。

 今回のハイブリッド蓄電システムは、日立化成製の合計容量576kWhの鉛蓄電池と、米Beacon Power社製のフライホイールを組み合わせた。フライホイールとは、弾み車を高速に回転させエネルギーを貯蔵・放出するシステム。

 日立化成が納入した鉛蓄電池は、同社製の従来品に比べて放電性能を1.5倍に高めた。出力1MWで1時間放電するシステムの場合、従来に比べ、設置スペースを約16%、質量を約15%低減した。期待寿命は17年で、長期の使用が想定される再エネ用に向くとしている。