ポーランドの発電・送配電事業者と共同で、送電線の安定、設備投資の抑制、再エネ導入拡大を実現
ポーランドの発電・送配電事業者と共同で、送電線の安定、設備投資の抑制、再エネ導入拡大を実現
(出所:NEDO)
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実証における役割
実証における役割
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月17日、ポーランドにおいて、系統安定化技術や蓄電技術を活用し、再生可能エネルギーの導入量の拡大に向けた実証事業に取り組むと発表した。

 ポーランドのエネルギー省と、スマートグリッド実証事業に関する基本協定を3月14日に締結した。

 ポーランドは、EU(欧州連合)加盟国として、再エネ比率を2020年に15%まで引き上げる目標の実現を目指している。風速が6m/s以上ある北部などの風力発電の適地に恵まれていることから、風力発電の導入量を2020年に6600MW(6.6GW)まで拡大する。

 ただし、国内の送電網が、これだけの風力発電電力を受け入れられる状況にない。電力設備の50%以上が40年以上前に建設されたもので、風力発電を大量に導入するためには、電力系統への過負荷対策が必要になり、設備の更新や増強が急務となっている。

 こうした状況から、経済的な負担を抑えながら、再エネの大量導入に対応できる系統安定化システムが求められている。

 今回の実証は、NEDOとポーランドのエネルギー省による共同事業となる。日立製作所、日立化成、三井住友銀行などに委託し、2015年2月~2016年11月に実施した実証前調査の結果を踏まえ、3年半の期間で実証する。

 日本企業の持つ系統安定化技術と蓄電技術を活用することで、送電線の安定運用、設備投資の抑制、再エネの導入拡大という3つの目的を実現するとしている。

 日立製作所は、ポーランド国営の送電会社であるPolskie Sieci Elektroenergetyczne社(ポーランド・パワーグリッド)、ポーランド北西部の配電会社であるENERGA-OPERATOR社、ポーランド北西部の発電会社であるENERGA Wytwarzanie社と共同で、送電線への過負荷防止のための系統安定化システムに取り組む。

 日立化成は、ENERGA Wytwarzanie社と共同で、風力発電に適したLiイオン電池と鉛電池を使ったハイブリッド蓄電システムの実証に取り組む。

 また、日立製作所と日立化成、三井住友銀行は、系統安定化システムや蓄電システムの事業モデルとファイナンス手法、その普及の可能性を検討する。

 系統安定化システムでは、電力系統からのオンライン情報を基に常時、演算し、系統側の事故発生時の状態をシミュレーションし、対策を立案する。実際に系統で事故が発生した場合には、この結果に従って自動で制御し、送電線に過剰な負荷がかかることを防ぐ。

 系統側だけでなく、風力発電の出力抑制や蓄電システムなどの制御方法を計算し、事故発生時に自動で制御する。

 また、風力発電の導入量の拡大によって、火力発電などの減少によって需給バランスを維持する必要がある。火力発電が担ってきた調整力が不足する課題に対して、ポーランドの周波数維持制御システムと連携し、蓄電システムを調整力として活用する。

 蓄電システムは、高出力のLiイオン蓄電池と大容量の鉛蓄電池を組み合わせて構成する。これによって、高性能と低コストを両立する。

 この蓄電システムによって、風力発電の短周期変動緩和、周波数制御用の予備力の提供、揚水発電に相当する予備力の提供、需給バランス調整用の予備力の提供、電力需要のシフトを実現するとしている。

 日立製作所と日立化成は、検証した事業モデルを、欧州の他の地域に展開することを検討していく。