実証事業のイメージ図
実証事業のイメージ図
(出所:NEDO)
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実証実施体制図
実証実施体制図
(出所:NEDO)
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年3月21日、ドイツ・ニーダーザクセン州で、再生可能エネルギーの電力需給バランスを調整して電力系統を安定化する「大規模ハイブリッド蓄電システム」を構築する実証事業を実施すると発表した。

 3月19日付で同州経済・労働・交通省、同州内の17郡4市の電力供給を担う目的組合EWE-Verband、同組合が100%出資する有限会社EEW Holding社と基本協定書(MOU)を締結した。

 ドイツは、2050年に国内電力需要の80%以上を再エネに転換するエネルギー政策“Energiewende”を掲げており、風力、太陽光などの再エネ導入を積極的に進めている。特に、ドイツ北西部に位置するニーダーザクセン州は、2015年時点にドイツで最も多くの風力発電設備を導入済み。その一方、周波数など電力品質を維持してきた火力電力などが使われなくなってきているため、その役割を代替する技術へのニーズが高まっている。

 実証事業では、高出力の充電・放電の可能なLiイオン電池と、大容量で長時間の充電・放電が可能なNAS電池を組み合わせ、電力系統情報および蓄電池制御システム(系統情報制御システム=GCS)によってバランシング・グループ(発電事業者と電力需要家で構成され電力受給を調整するグループ)内外と情報をやり取りして電力需給バランスを調整する。火力発電代替機能のPrimary Control Reserve供給、Secondary Control Reserve供給、バランシング・グループ内でのバランシング、ローカルな電圧安定化に寄与する無効電力供給の4つの機能を備えた。

 Liイオン電池は日立化成製で出力7.5MW、容量2.5MWh。NAS電池は日本ガイシ製で出力4.0MW、容量20.0MWh。GCSは日立パワーソリューションズ(茨城県日立市)製。NEDOの委託先である3社は、ドイツの地域電力会社EWE社と同実証事業を共同実施することで合意し、協定付属書(ID)を締結した。実施期間は2017年4月~2020年3月の3年間。予算総額は約28.8億円。

 同実証事業を通じて、同システムのドイツ国内外の発電事業者や電力取引事業者に販売するなどのビジネスモデルを検討し、今後の普及を目指す。また、同事業は、ニーダーザクセン州の大規模再生エネルギー導入対策プロジェクト“eneraプロジェクト”との連携を予定している。