「なぜ、キヤノンに独占交渉権を付与するという決定に立ったのかをご教示いただきたい」――。富士フイルムホールディングスは2016年3月16日、東芝が同月9日に医療機器子会社の東芝メディカルシステムズの売却に関する独占交渉権をキヤノンに付与すると発表したことに関し、「質問状」を東芝宛に送付した(関連記事)。東芝が独占交渉権をキヤノンに与えた理由について疑問を突きつける内容で、回答期限を3月17日午後3時に設定している。

 富士フイルムは3月初旬に締め切られた2次入札に応札したもようで、売却先の有力候補と目されていた。企業間の交渉案件に関し、こうした形で異議を唱えることは異例だ。

 質問状では「東芝が東芝メディカルの売却益を平成28年3月期決算に計上する考えであるとの報道から、その前提として、キヤノンによる東芝メディカルの株式取得の手続きが本年3月末までに完了することが予定されているものと認識している」とした上で、その実現性に疑問を呈している。

 富士フイルムは、独占禁止法の規定によって、原則として公正取引委員会による届出受理の日から30日を経過するまでは株式取得を完了させることができないことを指摘。東芝がキヤノンに独占交渉権を付与した「3月9日時点で本年3月末までに本件にかかる株式の取得が完了することを前提とすることについては疑問がある」(富士フイルム)とする。海外の競争法との関係でも同様の疑問が生じるという。東芝メディカルの売却益は「重要地域における必要な競争当局のクリアランス取得後のクロージング時に計上されるべきであり、クリアランスを取得しない限り、各種会計基準に照らし、売却益も計上されないと理解している」(富士フイルム)。

 その上で、東芝において「これらの疑問点についてどのように認識されているのか、また特別な対応策があるのか、ご教示いただきたい」と要求。東芝メディカルの売却手続きが「本年3月までに完了し、本年3月に売却益計上が可能とは考え難く、なぜ、キヤノンに独占交渉権を付与するという決定に立ったのかをご教示いただきたい」と結んでいる。

 なお、東芝は本誌の取材に対して、「質問状が届いているかどうかを含め、コメントできない」(同社 広報)としている。