系統用蓄電池の容量低減に寄与

 ここでは、自動車ならではの数量の多さが武器になるという。例えば、「リーフ」は、2010年に発売後、累計約25万台が販売されている。2050年には、相当数のEVが普及しているとみられる。

 2016年の世界全体の自動車の年間販売台数は約8700万台で、今後、さらに増えて1億台を超えると予想されている。これがすべてEVに代替されると、現在の「リーフ」の蓄電池で試算しても、EVによる蓄電容量は毎年、合計で30億kWh増えていくことになるという。

 再エネの導入量や発電量も増えていくことから、より増えてくる余剰電力の吸収は、EVによる蓄電が支えていく構造となり、普及によって両者のコスト削減もより進むというサイクルになることを期待している。

 現在、再エネ電力の出力変動の吸収などの手法として、大規模な蓄電池システムを活用し始めている。技術的には進化が見られるものの、コスト面に課題が残っている。

 この役割をEVの蓄電池が担えば、メガソーラー(大規模太陽光発電所)や電力網に組み込む大型の蓄電池の容量を減らせ、コストの障壁が下がってくる。こうした手法は、米国などで検証し始めている(関連ニュース1)。

「リーフ」の蓄電池をVPPのように使う
「リーフ」の蓄電池をVPPのように使う
(出所:日経BP)
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 住宅では、すでに「リーフ」の蓄電池の電気を住宅で使う仕組み「LEAF to Home」を提供している。1台当たりの蓄電池の容量は24kWh、最新モデルでは30kWhもあり、満充電であれば、一般家庭の1日当たりの平均消費電力約10kWhに対して、2日分以上の電気を供給できる。

 太陽光発電システムを備えた住宅であれば、日中の消費電力を「リーフ」の蓄電池から賄うことで、太陽光発電電力をフルに売電することも可能になる。

 こうした手法を応用すると、多くのEVをネットワークのように結ぶことで、仮想発電所(VPP)のように運用できる。

 例えば、横浜市にある本社ビルに対しては、100台の「リーフ」をネットワークにして蓄電池を束ねれば、「LEAF to Home」と同じように消費電力の一部を賄えるという。

 本社ビルの1日当たりの消費電力である約10MWhに対して、「リーフ」100台の蓄電池の合計容量は2.4MWh以上となる。

 本社ビルがある横浜市西区の1日当たりの消費電力は約530MWhで、これに対して、5万台の「リーフ」があれば、蓄電池の合計容量は1200MWh以上となり、2日間分近くに相当する電気を賄えるという。