講演するイケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス社長
講演するイケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス社長
(出所:日経BP)

 家具・雑貨量販店を世界的に展開するイケア(IKEA)の日本法人、イケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス(Helen von Reis)社長は3月8日、自然エネルギー財団が開催したシンポジウム「REvision2017」において講演し、同社の再生可能エネルギーに対する取り組みを紹介した。

 イケアでは、自社の事業を、「家具や雑貨などの販売を通じて、より良い生活を実現すること」と意義付け、その前提として、「より良い生活を持続的に続けていく環境なしには実現しない」と考える。そこで、「より良く設計・製造された商品の販売だけでなく、地球環境への配慮や温暖化対策に早くから取り組んできた」と言う。

 例えば、商品の梱包がある。「フラットパック」と呼ぶもので、組み立て前の家具を平たく、小さく梱包して出荷・輸送する。これによって省スペース化でき、保管や輸送のコストを削減している。この梱包は、輸送などの省エネにも寄与している。

 低コストながら、顧客が自宅でより良い生活を実現する商品を提供することを目指している。同時に、「こうした事業を運営する際のエネルギーにも配慮することで、持続可能な社会や地域への転換にも寄与したい」と言う。

 この一環として、再生可能エネルギーを積極的に活用している。自社施設での再エネ活用を拡大するとともに、調達先や物流などの製品のサプライチェーン全体においても、脱炭素化に取り組んでいる。

全世界で73万枚の太陽光パネルを設置
全世界で73万枚の太陽光パネルを設置
(出所:イケア・ジャパン)
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2016年度の再エネ比率は71%に
2016年度の再エネ比率は71%に
(出所:イケア・ジャパン)
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 イケア全体で、2020年までに自社施設と製品のサプライチェーン全体で消費する電力を上回る再エネ電力を確保することを目標にしている。2016年度の再エネ発電量は3.2TWhとなり、この目標の達成率は71%にまでに達している。

 再エネ発電への投資では、2009年以降、合計15億ユーロを風力・太陽光発電に投資してきた。これにより、風力発電設備は415基を所有しているほか、自社の建物などに73万枚の太陽光パネルを設置した。

 「再エネ電力の活用は、地球環境に対してポジティブな影響を与えるだけの目的ではなくなってきた。経済性でも合理的になってきた」と言う。

 化石燃料などによる既存の電力コストが、長期的に上昇傾向で推移していくと予想されている中、「燃料コストのない再エネは、このようなリスクが少なく、エクスポージャー(金融資産に占める価格変動リスクのある資産の割合)を減らす利点もある」とする。

 「低コストの電源となった再エネをより多く活用すれば、顧客に対して、手ごろな価格で高品質な商品を提供するという、イケアの事業を財務面でもサポートするものとなる」と言い切る。