図 「業務シナリオセッション2」の発表者
図 「業務シナリオセッション2」の発表者
各発表者が参加するパネルディスカッションの場面。
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 Industrial Value Chain Initiative(IVI)が開催した「IVI公開シンポジウム2017-Spring-」(2017年3月9~10日、ベルサール汐留)における実証プロジェクトの発表(合計25件)では、数件で中小企業のIoT(Internet of Things)対応をテーマにしたものがあり、その効果を明らかにした。

 中小企業がIoTを導入して生産ラインの情報を取引先に提供することについて、「顧客に情報を開示したからといって、製品に対して支払われる対価が増えるわけではない。せいぜい、取り引きを切られにくくなる程度の意味しか感じられない」という声がある。製品を納めて、ものへの対価をもらうという従来通りのビジネスを前提とすれば、情報を提供することの意味は見えにくい。IVIの実証実験で見えたのは、顧客に対してサービス強化を考える企業が「ものを造って売る」ことから、「ものを造るサービスを提供する」ことへの転換を図る上では、IoTが有効な手段になることだ。

「他の会社から提案されたことがないサービス」

 「町工場の生産工程お知らせサービス」(ワーキンググループ2H03)では、ファシリテーターである伊豆技研工業(本社静岡県三島市)の小川文子氏が、顧客に対して生産進捗状況をリアルタイムで発信するサービスの実現について発表。受注生産品について、各生産工程が終了するごとに指示書のバーコードを読み込み、進捗状況を社内だけではなく顧客と共有できるようにする。顧客は中小企業に電話で問い合わせなくても、納期などについて把握することが可能になり、時に生産未着手の原因が顧客自身からの支給品の未着であるうような状況もすぐに分かる。

 このような実証実験の結果、顧客からは「進捗が分かることがよい。特急品の発注について相互に納期調整ができると便利なのでは」といった具体的な指摘の他に、「他の会社からは提案されたことのないサービスで新鮮。中小企業がここまでやるのはすごい」という感想をもらったという。小川氏が「実際には中小企業の立場で費用を掛けて情報システムを充実させることは大変だが、できる範囲で1つひとつ進めていきたい」と述べた。