三菱重工業と三菱航空機は、小型ジェット旅客機「MRJ」の量産工場(三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所MRJ最終組立工場)の建屋が完成したのを機に報道関係者に公開した(図1)。県営名古屋空港に隣接した立地で、完成した機体がそのまま名古屋空港に出ていけるようになる。ほとんどの設備は搬入前であり、もちろんMRJ自体もないが、電源や空調、天井クレーンなどのインフラストラクチャーは整った状態だ。

図1 MRJ最終組立工場の東面
図1 MRJ最終組立工場の東面
県営名古屋空港に向いた、東側の面。奥の半分が「構造ライン」用スペース、手前半分が「艤装ライン」用スペースに相当する。正面は巨大な扉であり、完成機はここから塗装工場(写真奥の隣接地に建設予定)へ向かう。
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 延床面積は、MRJ合計12機に相当する約4万4000m2。新工場のフロアは「構造ライン」と「艤装ライン」の2つに分かれる。構造ラインでは、飛島工場(愛知県・飛島村)で生産した胴体や主翼などの主要部品を運び込み、相互に結合する。機体の形になったら艤装ラインに移動し、エンジンのほか配線や配管、さまざまな装備品を取り付ける。完成した機体は、隣接地に建設予定の塗装工場に移動する(図2)。

 試作機での経験を踏まえて、ものの動線や作業の手順を決め、「レッスンランした結果」(説明に当たった三菱重工業交通・輸送ドメインMRJ事業部工作部長の立岡寛之氏)で工場を構築した。今後「実機用の部品が入ってくるまでの間」(同氏)に生産の準備を整える。「世界一流の航空機の組立工場にしたいという思い」(同氏)で工場を建設した。

 工場の隣に事務所棟があり、そこに生産技術、品質保証、業務などの部門を置く。「これまで大江地区(名古屋市港区大江町)にいたメンバーも集結する。名古屋空港の事務所にいる設計部門とも一体となって、この地区でMRJを量産していく」(同氏)という。

 稼働開始後、同工場は見学者を積極的に受け入れる考えで、そのための設備も設けた。ただし、見学者による撮影は基本的には禁止になる予定で、報道関係者に対しても“自由な”撮影は「今回が最初で最後」になるという。以下、同工場の内部を中心に、写真で紹介する。

図2 MRJ最終組立工場の見取り図
図2 MRJ最終組立工場の見取り図
図の上が東(県営名古屋空港の方向)で、北は図の左の方角。胴体や主翼、脚などの大物部品は左下の搬入口から入り、構造ラインを上へと進む。機体の形になったら一度工場の東面から外へ出て、艤装ラインに移る。艤装ラインではU字形の経路を進む。図中の番号付き記号は、本記事で掲載した写真の番号で、撮影場所と方向を示す。
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