アレイ周りの風の流れのイメージ
アレイ周りの風の流れのイメージ
(出所:「太陽光発電システム耐風設計マニュアル」太陽光発電システム風荷重評価研究会編)
[画像のクリックで拡大表示]

 一般社団法人・日本風工学会(JAWE)は2月21日、都内で公開研究集会を開催し、同学会を中心にまとめてきた「太陽光発電システム耐風設計マニュアル」を公表・解説した。50年に1回の強風でも損傷しない設計とし、現在、改定中のJISを先取りした形になる。

 固定価格買取制度(FIT)によって太陽光発電所が急増したのに伴い、ここ数年、太陽光パネルや架台などが強風によって損壊し、他の建築物を損傷するケースが出てきた。同学会では、こうした状況を受け、2014年度に「太陽光発電システム風荷重評価研究会」(主査・植松康・東北大学大学院教授)を設置し、太陽光発電システムの耐風性に関する調査・研究に取り組んできた。風工学のほか太陽光発電の電気関係の技術者も加わった。

 今回、公表した「耐風設計マニュアル」は、同研究会の3年間の活動成果としてまとめたもの。現場の技術者が活用することを想定している。

 現在、太陽光発電所の建設に際しは、基本的に電気事業法が適用され、太陽光パネル支持物の設計標準としては、JIS(日本工業規格)の「C8955」が適用される。ただ、「JISによる風荷重算定法は、風荷重を過小評価するといった問題点が指摘されている」(植松教授)。そこで、現在、経済産業省の設置した日本工業標準調査会(JISC)において、改定作業が進められている。

 今回のマニュアルでは、現在のJISによる設計・施工上の問題点を明かにしつつ、独自の風洞実験や載荷試験によって検証し、適切な耐風設計を示した。同研究会の幹事を務めた高森浩治氏(奥地建産 耐風プロジェクト ジェネラルマネージャー)によると、「50年に1回の頻度の強風でも損傷せず、500年に1度の強風でもパネルや架台が飛散しないことを前提にした。民間による独自の指針だが、今後、公開されるJISの改定版を先取りしたものになる」と言う。

 「太陽光発電システム耐風設計マニュアル」は、全9章の141ページからなり、概説のほか、太陽光発電システムに関する「構造安全に関する関係法規」「設置工法と構造」「風荷重算定の基本と留意点」「耐風設計」「風洞実験による風荷重評価」「載荷試験による耐力評価」「風力係数に関する文献とその活用方法」「今後の課題」からなる。