3月9日午前、インドネシアなど東南アジアや太平洋にかけた地域で、皆既日食が観測された。
日本でも、部分日食が観測され、南の地域ほど大きく欠け、最大時で那覇では3割以上、福岡でも約2割が欠けると予想されていた。
本州の最南端に近い鹿児島県枕崎市も、国内では比較的大きく欠けることが予想される地域で、市内にあるメガソーラー(大規模太陽光発電所)から観測できた。
枕崎市には、豊富な日射量、土地の安さなどの利点から、多くの太陽光発電所が立地している。出力8.218MWのメガソーラー「枕崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所」も、その一つである(メガソーラー探訪の関連記事)。
その名の通り、枕崎空港の跡地にある。発電事業者は、オリックスと九電工の合弁によるSPC(特定目的会社)のKクリーンエナジー(鹿児島県枕崎市)となり、同市から土地を借りてメガソーラーを運営している。出資比率はオリックスが70%、九電工が30%となっている。
地域貢献の一環として、敷地内には、天文観測所が設けられている。Kクリーンエナジーが建設費用を負担した。
天文観測所の建設は、メガソーラーの地域貢献策としては珍しい。空港という立地上、周囲に天文観測の障害となる建物や照明などが少ないことから、Kクリーンエナジーが提案したという。
天文観測所は、日中の太陽の観測向けに一般公開されているほか、夜間の星の観測イベントが定期的に開催されている。
3月9日に晴天であれば、部分日食を天文台で観測しながら、発電量への影響を把握することも検討していたが、観測用機器の修繕と重なり、残念ながら実現しなかった。
肝心の天候は、朝から全国的に曇りや雨となり、日食の観測に不向きな状況となる中、枕崎市でも夜半から強い風雨が絶えなかった。
部分日食は、10時前に欠け始め、10時30分過ぎに日食が最大となり、11時30分過ぎに日食が終わると予想されていた。
枕崎空港跡のメガソーラーでは、日食の欠けが大きくなっていく時間帯に入っても、メガソーラーの出力が「0kW」を示す瞬間があるなど、風雨は収まらなかった。
しかし、日食が終わりを迎えると予想された時間に近い11時17分頃から、急に風雨が収まって雲が薄くなり、日食を観測できるようになった。
部分日食による発電量の急減は、日食の終わり近くの時間帯まで、雲に太陽が遮られ、発電量が少ない時間が続いていたことから、ほとんど影響なかったと見られる。
同発電所では、天文観測所以外にも、多角的な地域貢献に取り組んでいる。空港ターミナルビルの環境教育用施設としての活用、空港廃止後も存続している第三セクターの空港管理会社である、南薩エアポートへのメガソーラーの管理の一部の委託、枕崎市の地域振興基金への寄付などである。
枕崎市によると、Kクリーンエナジーによる同市への支出は、年間約8500万円となっている。法人住民税、固定資産税の納税や地域振興基金への寄付、南薩エアポートへの委託料からなる。