脳神経疾患研究所 附属 南東北BNCT研究センター(福島県郡山市)が導入した住友重機械工業製のBNCTシステム
脳神経疾患研究所 附属 南東北BNCT研究センター(福島県郡山市)が導入した住友重機械工業製のBNCTシステム
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 厚生労働省は2017年2月28日、「先駆け審査指定制度」の対象品目として7品目を指定した。2016年11月までに指定申請があった医療機器9品目、体外診断用医薬品6品目、再生医療等製品13品目から選定した。

 先駆け審査指定制度は、世界に先駆けて開発された革新的な医薬品や医療機器、再生医療などの製品を日本で早期に実用化するために、早期の開発段階で有効性が見込まれるものを指定する取り組み。指定されると、「優先相談」「事前承認」「優先審査」「審査パートナー制度」などの優遇措置が得られる。例えば医療機器に関しては、通常では12カ月に設定する審査期間の目標が、その半分の6カ月に短縮される。今回、医療機器で指定されたのは以下の3品目である。

 第1に、人工気管。悪性腫瘍や狭窄性疾患のために切除した気管を再建するために用いる、ポリプロピレンメッシュとコラーゲンスポンジから成る人工の気管である。第一医科が、京都大学などと共同で開発している。国内での治験を経て、世界に先駆けて日本で承認申請予定である。

 厚労省は指定理由として、気管欠損部位に留置し、気管の構造を保ち粘膜再建の足場となる点に新規性があり画期性が高いこと、臨床研究の全例で高い有効性を示唆する結果が報告されていることなどを挙げている。

 第2に、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)システム。BNCTは、ホウ素薬剤を腫瘍組織に集積させた後、体外から中性子線を照射し、ホウ素と中性子の核反応を利用して腫瘍細胞を破壊する治療法。BNCTシステムはここに使う中性子線を照射するための装置で、住友重機械工業が京都大学やステラファーマと共同開発中(関連記事1)。適応疾患は悪性神経膠腫と頭頸部癌である。国内で実施中の第II相治験の結果を踏まえ、世界に先駆けて日本で承認申請予定である。

 指定理由として、正常細胞をほぼ傷つけることなく腫瘍細胞を破壊できる点に新規性があり画期性が高いこと、悪性神経膠腫を対象とした国内第I相治験や頭頸部癌を対象とした臨床研究で、高い有効性が示唆されていることなどを挙げている。

 第3に、心臓シミュレーター「UT-Heart」(関連記事2)。病院で取得した心電図や心エコー、CTデータなどを使い、コンピューター上で患者個別の心臓を擬似的に再現。植込みデバイスを用いた心臓再同期療法の効果予測の判断を補助する医療機器プログラムである。東京大学発ベンチャーのUT-Heart研究所のシーズを基に、富士フイルムと共同で開発する。国内での治験を経て、 世界に先駆けて日本で承認申請予定である。

 心臓再同期療法を行った重症心不全患者では約30%が無効と報告されているが、無効例の診断は困難という。指定理由として、その心臓再同期療法の効果予測の判断を補助できる点に新規性があり、画期性が高いことなどを挙げている。

 このほか、体外診断用医薬品では、国立がん研究センターが開発したNCCオンコパネルを基に同センターとシスメックスが共同開発する「がん関連遺伝子パネル検査システム」が指定された。