並木精密宝石(本社東京)と岐阜大学の川﨑・毛利研究室らは、無通電状態で50kgf以上の把持力を維持する、4指を有したロボットハンドを開発し、1号機を発表した。これは、東北大学教授の田所諭氏がプログラム・マネージャーを務める、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のタフ・ロボティクス・チャレンジにおける初の研究成果である。多脚ロボットなどと組み合わせることで、災害現場や産業分野において、例えばバルブを回したり、電動工具を使ったりといった、人間の作業を代替することを狙っている。
今回発表したロボットハンドには、並木精密宝石が開発した直径12mmの小型無通電ロック機構付き高出力電磁モーターを各指に配置している。これは、同社のロック機構内蔵遊星ギヤ「dyNALOX」の技術を応用したもの。これに人間の指を模擬したロボットハンドを長年研究している、岐阜大学川﨑・毛利研究室の成果である小型高効率リンク機構を組み合わせることで、無通電ながら物体を把持することが可能なハンドを実現した。
ロボットハンドの指はモジュール化されており、1本当たり125N(約12.75kgf)の出力が出せる。これを4本備えたロボットハンドは、質量約50kgのワークを無通電状態で把持可能だ。把持し続けている間は電力消費がないため、作業時のロボットの消費電力の大幅な抑制が期待できる。例えば、50kgの土嚢を吊り下げたグリップボールを、無通電状態で3分程度把持する場合、電力を消費するのはグリップボールをつかむときと解放するとき、つまり指を動かすときだけで済むため、電力消費は従来の1/70程度で済むという。従来のロボットハンドは、把持力を維持するために電磁ブレーキなどを用いることが多く、「多自由度」「高把持力」「低消費電力」を両立することは難しかった。