線虫が引き寄せられる
線虫が引き寄せられる
[画像のクリックで拡大表示]

 「線虫」と呼ばれる生物を使い、1滴の尿から早期のがんを高精度に診断する――。そんな検査技術の実用化を目指すベンチャー企業「スマートエレガンス(SmartCelegans)」が福岡県で立ち上がった(同社のホームページ)。

 スマートエレガンスは、九州大学 大学院 理学研究院 味覚・嗅覚センサ研究開発センター 助教の広津崇亮氏らの研究グループが2015年3月に発表した研究成果の事業化を目指す(関連記事1)。同氏らは、がん患者に特有のにおいを識別する生物として「C.elegans」と呼ぶ線虫に着目。以下のようなメリットのあるがん検査手法が原理的に可能であることを示した。同氏らはこの手法を「n-nose」と名付けている。

 (1)尿1滴で検査でき、苦痛を伴わない。(2)尿の採取に当たって食事制限は不要で、通常の健康診断などで採取した尿を使える。(3)診断結果が出るまでの時間は、約1時間半と短い。(4)1検体あたり数百円以下のコストで検査できる。(5)多くのがんを1度に検出できる。今回の実験では、対象とした10数種類のがんをすべて検出でき、その中には早期発見が難しい膵臓がんも含まれた。(6)ステージ0または1の早期がんや、従来手法では見つけられなかったがんも検出できる。(7)検出感度は95.8%と高い。

 広津氏は、2015年9月開催の「次世代がん診断サミット2015 ~『超早期』への破壊的イノベーション、始まる~」(主催:日経デジタルヘルス)に登壇。研究者は研究成果の実用化よりも論文執筆を重視することが多いが、この成果については「自らが実用化に向けて本腰を入れる」と話していた(関連記事2)。