富士フイルムメディカルは、嚢胞腎の解析機能などを追加した医療向け3D画像解析システム「ボリュームアナライザー SYNAPSE VINCENT Ver4.4」を2016年3月3日に発売した。

 嚢胞腎の解析機能は、CTの断面像であるMPR上で長軸を指定するだけで、自動的に腎臓容積の計測を可能にするもの。従来、腎容積の計測は一般的な画像処理ツールを利用して手動で行われていた。非造影撮影で腎臓を自動抽出できるため、造影剤による副作用などのリスクなく解析できる。また、過去に実施した解析との比較や差分を自動で表示することができるため、多発性嚢胞腎の経過観察にも有用性がある。

 難病医療費助成制度の対象疾患の1つである常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の治療薬(バソプレシンV2受容体拮抗薬)を処方するには、両側総腎容積が750mL以上であること、腎容積増大速度がおよそ5%/年以上であること、という条件がある。同機能はその処方条件の1つに対応するもの。

 従来MRIでしかできなかった心臓血流の解析をCTでもワンストップで行えるようにした心筋パフュージョン機能も搭載した。冠動脈狭窄などの診断に必要な画像が得られる。この他、従来は頭部や心臓の領域で活用されていた血流灌流状態の可視化や定量化機能を腹部にも拡大した腹部パフュージョン機能も搭載。膵臓などの血流解析が可能になるため膵臓疾患治療の経過観察に有用とする。

 また、肝臓解析、腎臓解析(CT)、肺切除解析のデータを、SYNAPSE VINCENTで作成した3Dデータを埋め込んだPDF出力が可能。サーフェス表示オプションを利用することによりAcrobat Reader上で3Dデータを見ることができ、血管の支配領域などをシミュレーション的に観察できるという。

 富士フイルムメディカルの3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」は、2008年7月の発売以降、同社独自の画像処理技術「Image Intelligence」によって、放射線科、循環器科、消化器領域の内臓や血管などを高精度に自動抽出できると、その有用性が評価されている。