中国・福州市でディスプレーの国際会議「ICDT(International Conference on Display Technology)」が、2017年2月18~20日の3日間にわたって開催された(ICDT 2017のウェブサイト)。主催は、SID(Society for Information Display)の北京支部・台北支部・香港支部の3支部の合同組織と福州大学である。6つのスペシャルトピックと17のシンポジウムトピックに関する幅広いテーマに対して、260の論文を集め、約700人が参加した。

 会期の1日目は、まずビジネスカンファレンスと4件のセミナー講演が、午後のオープニングに先立つ形で午前に開催された。午後はオープニング(図1)に続き、7件のキーノート講演が夕方まで行われた。以降では、キーノート講演の中でも聴衆の関心が高く、講演後に多くの質疑がなされた韓国LG Display社とJOLEDの2件の講演を紹介する。いずれも有機EL(OLED)ディスプレーに関する内容である。

図1 ICDT 2017の初日午後のオープニング風景
図1 ICDT 2017の初日午後のオープニング風景
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ハイエンド市場で「OLED TV」の躍進を強調するLG Display

 LG Display社からキーノート講演に登壇したのは同社Vice PresidentのSoo Young Yoon氏。同氏は、有機ELテレビ(OLED-TV)とハイエンド液晶テレビ(Premium LCD-TV)を比較しながら、色域の広さ、ダイナミックレンジの広さ(高HDR)など、ほとんどの性能で有機ELが優っていることを強調した(図2)。その上で、同社が55型や65型で狙うハイエンドテレビ市場では、北米市場を中心に有機ELテレビが着実に伸びている実績を示した。

 有機ELテレビやモバイル機器用のプラスチック有機ELディスプレーに向けた投資計画に対しては、講演後に活溌な質疑がなされた。例えば、LG Display社の次期大型投資として期待される10.5世代ライン(P10)について、大型テレビ向けに有機ELパネルを量産するのか、液晶パネルの生産も継続するのか、また有機ELパネルを量産する場合に現行の「蒸着法白色有機EL+カラーフィルター」の方式からインクジェットRGB方式に変更するのか、といった戦略的な内容である。これらの質問に対する答えは「まだ社内で議論が行われている」であり、有機ELへの期待が高まる一方で事業判断の難しさを感じさせる議論だった。

図2 LG Display社による「OLED」と「Premium LCD」の比較
図2 LG Display社による「OLED」と「Premium LCD」の比較
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