バングラデシュのBRAC大学・電気電子工学部のAbdul Malek Azad教授らのグループが開発したソーラー・アシスト三輪車。左が旅客用、中央が救急車、右が貨物用
バングラデシュのBRAC大学・電気電子工学部のAbdul Malek Azad教授らのグループが開発したソーラー・アシスト三輪車。左が旅客用、中央が救急車、右が貨物用
(出所:BRAC University)
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 バングラデシュのBRAC大学は、太陽光を補助的なエネルギー源とした電動アシスト三輪車による救急車や輸送車両などの実証プロジェクトの成果をこのほど発表した。BRAC大学は、世界最大の非政府団体(NGO)である「BRAC」がその設立や運営に関わっている。

 このプロジェクトは、同大学・電気電子工学部教授で同大学の制御・応用研究センター(CARC)のディレクターを務めるAbdul Malek Azad博士らのグループが2014年から研究・開発していたもの。同大学の学生が2013年にまとめた卒業論文のプロジェクトが、発端という。

 CARCはその後、米国の電気電子技術者協会(IEEE)の「人道的技術研究会(SIGHT)」から試作車を製作する資金を獲得し、研究開発に取り組んでいた。同グループはバングラデシュの政府系機関や世界銀行からも資金を得て、合計15台の「ソーラー・アシスト三輪車」による12カ月間の実証プロジェクトとした。15台の内訳は、旅客輸送用、救急車用、荷物などの輸送用の各5台ずつである(図)。

 各車両には、出力100Wの単結晶シリコン型太陽光パネル4枚、合計400Wを搭載した。蓄電池には、出力電圧12Vで容量が20~Ahから50Ahの密閉型鉛蓄電池を4個使用している。太陽光の発電電力を蓄えるだけでなく、外部電源からの充電も可能とした。カートリッジ式で交換もできる。

 車両の完成後、首都ダッカの郊外にあるGendaとSavarなどの地域で4カか月間のフィールドテストを行った。その結果、ソーラー・アシスト三輪車は太陽光パネルを搭載していない従来の電動三輪車と比較して、1回の充電で走れる航続距離が約3倍の80~90kmまで伸び、走行速度も従来の車両と比較して約2倍の35~45km/hまで向上したという。

 試作車両では、太陽光パネルの搭載だけでなくトルクセンサー技術による踏力の制御やショックアブソーバーなども採用しており、運転車や利用者からの反応も概ね良好だったという。

 特に、所得水準の低い地域では人の移動や患者の搬送などに人力による三輪車などが現在も日常的に使用されているため、今回の実証プロジェクトで開発した旅客車や救急車の有用性が高かったとしている。

 貨物や荷物の運送でも、従来型の電動三輪車と比較して航続距離や最高速度が大幅に向上し、運転車者の収入増が見込めるため、評判が良かったという。

 バングラデシュでは、首都のダッカではバスやタクシーなどの公共交通機関と圧縮天然ガス(CNG)による三輪車が主に利用されている。地方では所得水準が低く、自転車や人力の三輪車がまだ多い。

 バングラデシュ政府は、大気汚染の原因となることからガソリンを燃料とした三輪車を既に禁止している。電動の三輪車は一部の地域で使用されているが、電力の供給が需要に追い付いていないため、政府の許認可が必要という。

■変更履歴
最初の段落で、「BRAC大学は、非政府団体(NGO)であるBRAC (Building Resources Across Communities)が運営」としていましたが、正確には「BRAC」は現在何らかの頭文字語とはなっておらず、またBRACは同大学の創立や運営に関わっているものの、直接運営していません。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/2/28 17:50]