PSIIの全体構造
PSIIの全体構造
(出所:岡山大学)
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光化学系II複合体に含まれる水分解触媒の立体構造
光化学系II複合体に含まれる水分解触媒の立体構造
(出所:岡山大学)
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水分解・酸素発生の反応機構
水分解・酸素発生の反応機構
(出所:岡山大学)
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 岡山大学と理化学研究所(理研)、京都大学らの共同研究グループは2月21日、光合成プロセスの中で、これまで謎だった2つの水分子が分解されて1つの酸素分子が形成される触媒反応の基本原理を明らかにした、と発表した。

 光合成の水分解反応において、光化学系II複合体(PSII)が酸素分子を発生させる直前状態の立体構造を捉えることに成功し、酸素分子の生成部位を特定した。

 PSIIは、光エネルギーを利用して水分子を酸素と水素イオン(プロトン)と電子へと分解して酸素分子を発生させる、いわば“光合成の始まり”を担う。これまでにPSIIの高純度結晶の立体構造を解析し、水分子を分解する触媒の立体構造の正体は Mn4CaO5クラスターで“ゆがんだイス”のような形状をしていることが明らかになっている。

 “ゆがんだイス”の触媒は、周期的な5つの中間状態を経て水分解反応を行う。今回、水を分解する反応サイクルの「途中」状態に相当する立体構造を解析し“ゆがんだイス”の触媒の中に新たな水分子が取り込まれる様子を捉えることに成功。水分解反応の「始まり」の状態ではMn4CaO5クラスターの触媒が、反応「途中」の状態で水分子を取り込むことで反応中間体の1つに変化することを明らかにした。立体構造の解析には、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを用いた。

 今回の成果は、太陽の光エネルギーを利用して水分解反応を人工的に実現する触媒の構造基盤に関する情報を提供するもの。この反応を模倣する「人工光合成」が実現すれば、太陽の光エネルギーを利用して水から電子と水素イオンを取り出して有用な化学物質を高効率・低コストで作り出せると期待される。