東京大学とイスラエル・ホロン工科学院研究所(Holon Institute of Technology)、イスラエル・ワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)、理化学研究所(理研)らの共同研究グループは2017年2月17日、無機ナノチューブの一種である二流化タングステン(WS2)ナノチューブに対して電解質ゲートを用いたキャリア数制御を行うことにより、WS2ナノチューブの電気伝導性を制御できること、電子を多量にドープした領域で超伝導が発現することを発見したと発表した(ニュースリリース)。さらに、螺旋状の巻き方の自由度を持つ円筒構造という特徴的な形状に由来する新規超伝導輸送特性の観測にも成功した。

多層二硫化タングステン(WS2)ナノチューブの透過型電子顕微写真とデバイスの模式図。試料は直径100nm程度の多層ナノチューブ。正のゲート電圧を印加することで、表面および層間に正イオンが集積し、試料中に電子が蓄積される
多層二硫化タングステン(WS2)ナノチューブの透過型電子顕微写真とデバイスの模式図。試料は直径100nm程度の多層ナノチューブ。正のゲート電圧を印加することで、表面および層間に正イオンが集積し、試料中に電子が蓄積される
(写真:東京大学のプレスリリースより)
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 WS2ナノチューブは、遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる物質群の一つであるWS2のナノ構造体の一種で、グラフェンに次ぐ原子層物質として近年大きな注目を集めている。金属と絶縁体の中間の電気伝導性を示す半導体であり、固体ゲート絶縁体材料を用いた電気伝導性の制御や力学特性の研究が行われてきたが、超伝導を含めた電気伝導性の大幅な制御は未報告だった。