低炭素電源を9割以上に
低炭素電源を9割以上に
(出所:環境省)
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分散型システムで地域活性化
分散型システムで地域活性化
(出所:環境省)
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 環境省は1月19日、「長期低炭素ビジョン」の素案を公表した。「2050年に温室効果ガス排出量を80%削減する」という国内目標の達成のため、「発電電力の9割以上を再生可能エネルギーなどの低炭素電源にする」「炭素税や排出量取引など、二酸化炭素の排出に価格を付けるカーボンプライスが有効」などの方向性を示した。

 これは、中央環境審議会地球環境部会・長期低炭素ビジョン小委員会で半年にわたり10回の討議を経てまとめたもの。温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定では、「今世紀後半までに世界全体で温室効果ガスの排出量を実質的にゼロ」を明記しており、日本でも国内目標として、「2050年に温室効果ガス排出量を80%削減」を掲げている。

 今回の小委員会では、こうした2050年までの大幅な温室効果ガス削減に向けた産業・社会構造のあり方や政策の方向性を議論した。
 
 電源構成については、再生可能エネルギー、CCS(二酸化炭素の分離・固定) 付きの火力発電、原子力発電という3つの低炭素電源で、国内の発電量の9割以上を賄う、という数値目標を明記した。

 また、電力システムの方向性として、電気受給の基本的枠組みが、「需要に応じた供給」から、「供給を踏まえて賢く使う・貯める」という形態に変わり、家庭で再エネを「自家消費」し、必要に応じて地域内で融通する、という分散型システムの有効性を明記した。

 こうしたエネルギーシステムの構造変化で、再エネ産業が地域の基幹産業として成立、その担い手として市民、地元企業や地方公共団体など多様な主体が参加・連携し、雇用が創出され、地域コミュニティ機能の維持・向上にもつながる、との見方を示した。

 再エネが大量導入された社会では、安定的な電力供給のため、 需給調整、周波数調整に貢献する技術として、蓄電池・水素システム、蓄熱、デジタルグリッドなどのニーズが高まり、大量に普及するとした。加えて、電力需要の多い産業は、再エネの発電集積地に立地することによって、電力系統への負荷が最小化されるーーなどのビジョンを示した。