シーメンスヘルスケアは2016年2月4日、記者向けの事業戦略説明会を開催し、日本における戦略と方向性を発表した。

 2015年10月、独Siemens社のヘルスケア事業が分社化して、独Siemens Healthcare社が発足した。これに合わせて、Siemens社の日本法人であるシーメンス・ジャパン株式会社は2015年10月にヘルスケア以外の事業をシーメンス株式会社に引き継ぎ、2016年1月1日には社名をシーメンスヘルスケアに変更。現在はSiemens Healthcare社の日本法人として、画像診断装置、治療装置、超音波装置、サービスなどのヘルスケア事業を展開する。

 シーメンスヘルスケア代表取締役社長兼CEOの森秀顕氏は、日本における戦略と方向性として次の3つを挙げる。「事業ポートフォリオ、販売チャネルを拡充」「顧客のニーズ、購買プロセスの多様化に対応」「アジア地域との緊密な連携」である。

 このうち「事業ポートフォリオ、販売チャネルの拡充」では、遺伝子診断、治療領域など新たな分野に事業を拡大。中小規模病院向けの低価格帯マーケットに対応するための製品ポートフォリオも拡充する。さらに、MRI装置のリモート操作など新たなサービスを拡充させていく。Siemens Healthcare社はMRI装置のリモート操作について、ブラジルの離島向けにサービストライアルを開始しており、「日本の顧客とも同じことができないか話をしているところ」(森氏)だという。

 「顧客のニーズ、購買プロセスの多様化に対応」は、製品購入の意思決定に関与を強める医療機関の経営層に対応するためのバリューポートフォリオ(経営者の視点によるフレームワーク)の強化、セールスチームの統合などマーケティング戦略の方向性の拡大、重要顧客とのパートナーシップ契約などでパートナービジネス、キーアカウントへの対応を強化する。

 最後の「アジア地域との緊密な連携」は、顧客である医療機関のアジア地域への進出や逆にアジア地域からのメディカルツーリズムによるインバウンド需要の取り込みを支援するというもの。そのためのベストプラクティスの共有やノウハウの提供、人材育成・交流の推進に取り組んでいく。

 これら日本向け戦略の背景には、日本における医療機器市場の環境変化がある。政府は高齢化に伴って高騰中の医療費総額を抑制するために「早く治して早く退院させる」ように医療機関を強く指導している。高額な治療行為を必要とする急性期床数は、2014年の77万から2025年には53万にまで減少する見通しである。

 この結果、Siemens Healthcare社が得意とするMRI/CT/PET装置などのハイエンドな医療機器の需要は確実に少なくなっていく。その中で成長を続けるには、低価格製品を含めた新規市場の開拓やサービス事業を拡充するなどの対策を実施する必要があるのだという。

シーメンスヘルスケア代表取締役社長兼CEOの森秀顕氏
シーメンスヘルスケア代表取締役社長兼CEOの森秀顕氏