出力10kW以上の太陽光発電のシステム費用の分布
出力10kW以上の太陽光発電のシステム費用の分布
出力1000kW以上の中央値が全体の中央値に近づき、「効率的な事業」の水準ではなくなりつつある(出所:経済産業省)
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より上位の水準を想定したシステム費用を検討
より上位の水準を想定したシステム費用を検討
出力1000kW以上の15%、25%、35%の値を例に示す(出所:経済産業省)
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 経済産業省は2月4日、第21回 調達価格等算定委員会を開催し、2016年度の固定価格買取制度(FIT)における再生可能エネルギーの買取価格(調達価格)を議論した。

 買取価格を定める際のベースとなるコストのうち、主に出力10kW以上の太陽光発電のシステム費用(太陽光パネル、パワーコンディショナー:PCS、架台、工事費を含む)の想定値を検討した。これまでは、「効率的に事業を実施した案件の水準を採用する」目的で、最新期の「出力1000kW(1MW)以上の中央値」を採用してきた。

 しかし、年を追うごとに、出力10kW以上全体のシステム費用の分布が、1000kW以上の分布に近づいている。事務局(経産省)は、「1000kW以上の中央値が、必ずしも効率的な事業における費用の水準になっていない」との認識を示した。

 過去の価格算定におけるシステム費用の想定値を、それぞれの年の10kW以上の分布と照らし合わせると、2012年は上位5~6%、2013年は上位9%、2014年は上位19~20%、2015年は上位29%の値に相当している。

 FITの施行開始当初の2012年はシステム費用の分散が大きかった。バラつき度合いが小さくなったのは、全体として、システムコストの低減が進んできた成果ともいえる。10kW以上全体の中央値と、1000kW以上の中央値の価格差は、2012年の13.1万円/kWから、2015年は3.8万円まで縮小してきた。

 こうした状況で、2016年度の太陽光発電のシステム費用の想定値として、これまで通りの「1000kW以上の中央値」を取ると、29.0万円/kWとなる。

 2015年に稼働した10kW以上全体の上位29%に相当する水準で、中でも、直近の2015年10~12月に稼働した案件に限定してみると、1000kW以上の中央値である28.0万円/kW(同時期の出力10kW以上全体の25%相当)となっており、すでに10kW以上では、29.0万円/kWは一般的な太陽光発電事業で実現できる水準となっている。

 そこで、経産省は、より効率的なシステム費用を想定値として採用するアプローチが必要ではないかと提案した。
 
 経産省は、三つの参考例を示した。一つ目は、1000kW以上の上位35%、10kW以上全体の20%(推計219万kW)に相当する26.8万円/kW。二つ目は、1000kW以上の上位25%、10kW以上全体の15%(推計159万kW)に相当する25.1万円/kW。三つ目は、1000kW以上の上位15%、10kW以上全体の9%(推計96万kW)に相当する23.2万円/kWである。

 こうした提案について、委員からは、「設備認定から短期間で稼働する低圧案件と、稼働までに長期間を要するメガソーラー(大規模太陽光発電所)では、同じ年に稼働しても、買取価格が異なるなど、システム費用の条件が違う場合が多く、1000kW以上の中央値を採用すること自体、見直した方がよいのではないか」、「投資意欲を必要以上に冷ます可能性があるため、システム費用の想定値を過剰に下げることは避けるべき」といった意見があった。

 おおむね、経産省が示した23.2~26.8万円/kWの想定値は適切で、現時点でこれ以上の低下に踏み込むのは、慎重にすべきという見解だった。最終的にはシステム費用の想定値は、この価格帯のなかで決まりそうだ。

 システム費用以外のコスト要因となる、土地造成費(0.4%)、接続費(1.35万円/kW)、運転維持費(0.6万円/kW)、設備利用率(14%)は、前回の議論の通り、いずれも従来通りに据え置かれる方向となっている。

 今回、例として示された23.2~26.8万円/kWのシステム費用が採用された場合、2015年度の想定値が29万円/kWだっただけに、買取価格を下げる方向に働く。