CO2をギ酸に変換する多孔質ガラス板の写真(オレンジ色の透明な板)と多孔質の内部で起こる反応
CO2をギ酸に変換する多孔質ガラス板の写真(オレンジ色の透明な板)と多孔質の内部で起こる反応
(出所:大阪市大)
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光照射時間と面積当たりのギ酸合成量の関係(受理された論文の図を改変して引用)
光照射時間と面積当たりのギ酸合成量の関係(受理された論文の図を改変して引用)
(出所:大阪市大)
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 大阪市立大学は1月20日、太陽光を利用して二酸化炭素(CO2)をギ酸に変換する触媒を多孔質のガラス板に設置することで、従来に比べて合成効率を15倍にできたと発表した。

 CO2と水を原料に太陽エネルギーに使って炭化水素を合成する仕組みを「人工光合成」と呼ぶ。 現在、人工光合成技術の一つとして、CO2をギ酸(燃料源、水素エネルギー貯蔵媒体)に変換する「ギ酸脱水素酵素」が見出され、太陽電池に使われる人工色素と組み合わせることで、太陽光を使ってCO2をギ酸に変換する「太陽光-ギ酸合成システム」 が提案されている。

 大阪市立大学・人工光合成研究センターの天尾豊所長、複合先端研究機構の野地智康特任講師らのグループは、「太陽光-ギ酸合成システム」を、ナノメートルサイズの微細な穴をもつ板ガラスの中に配置することで、従来の触媒システムと比べて約15倍の効率でギ酸の合成反応を進めることに成功した。

 従来の「太陽光-ギ酸合成システム」は、触媒分子を溶媒に均一に分散させて反応させてきた。この方法は、効率向上に限界があることに加え、合成したギ酸を溶液中から回収することが非常に困難で、コストが掛かる課題もあった。

 「太陽光-ギ酸合成システム」を基板に固定できれば、基板表面上でCO2がギ酸に変換されるため、ギ酸のみの溶液を回収しやすくなる利点もある。天尾所長らは、その基板として、多孔質ガラス板に注目し、大きな成果を得た。

 現在、ギ酸を水素やメタノールに変換する触媒開発も進んでおり、将来的にそうした触媒を、「太陽光-ギ酸合成システムを導入した多孔質ガラス板」に固定できれば、「太陽光をあてるとメタノールや水素を合成するガラス板」が作れる可能性があるという。