東北大学大学院 医工学研究科・工学研究科 教授の松浦祐司氏らの研究グループは、遠赤外線を使って、採血なしで血糖値を測定できる手法を開発した(pdf形式のニュースリリース)。病院のベッドサイドで使える血糖値モニタリング装置や、小型で安価なヘルスケア機器としての実用化を目指す。

 現行の血糖自己測定法は、指先から少量の血液を採取する侵襲的な方法だ。これに対し最近では、近赤外線を人体に照射し、その一部が血液中のグルコースに選択的に吸収されることを用いた測定手法の提案が増えている。ただし、近赤外線に対するグルコースの吸収は非常に小さく、正確な測定は困難だったという。

 対して、波長10μm付近の遠赤外線はグルコースに強く吸収される。原理的には高精度のグルコース測定が可能だが、皮膚のごく表面で遠赤外線がすべて吸収されてしまうために、従来は血糖値を正確に測定することは難しかった。

 研究グループは今回、遠赤外線を照射するプリズムを柔軟な中空光ファイバーの先端に取り付けた装置を開発。皮膚のような厚い角質のない、唇の内側の粘膜にプリズムを触れさせて遠赤外線を当てることで、血液中のグルコースを正確に検出できるようにした。現状での測定誤差は20%以内と、臨床での利用に十分な精度という。近年開発が進んでいる遠赤外線レーザーを光源に使えば、小型化・低コスト化が可能としている。