産業技術総合研究所(以下、産総研)は、トクセン工業(本社兵庫県小野市)と共同で電気を通す透明なフィルムを開発した。トクセン工業は線径9μmと極細の金属ワイヤーを製造する技術を持っており、産総研はそのワイヤーを利用することで透明な導電性フィルムを作製した。LEDやセンサーを実装することにより、フィルムにさまざまな機能を持たせられる。

 製造プロセスは、大まかには「内側に粘着剤が付いた2枚のフィルムで、金属ワイヤーを挟み込む。気泡が入らないように加熱しながら圧着する」(産総研)。その際フィルム内でワイヤーを波状にして、フィルムを伸ばしても断線しないようにする。

 従来はカーボンナノチューブや銀ナノワイヤーを利用していたが、伸縮によって抵抗値が大きく変化してしまったり、歪みによって劣化したりしていた。金属をフィルム上にエッチングする方法では、微細な配線だと破断してしまう問題もあった。

 新しく開発したフィルムは、波状にした金属ワイヤーの形状によっては2倍以上に伸び縮みさせることが可能で、伸縮によってLEDの発光輝度が変化したり、折りたたんでハンマーで叩いたときに断線したりすることはない。人間の目では30cm離れれば線径9μmの金属ワイヤーは認識できないため、フィルムは透明に見える。

導電性フィルムの特性
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導電性フィルムの特性