台風15号による太陽光設備への被害
台風15号による太陽光設備への被害
 (出所:経済産業省・産業構造審議会 保安分科会 電力安全小委員会・資料)
[画像のクリックで拡大表示]

 経済産業省は1月25日、産業構造審議会 保安分科会 電力安全小委員会 新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ(WG)・第7 回会合を開催し、太陽光発電設備の安全確保のための取り組み強化などについて議論した。出力2MW未満の中小規模の設備を念頭に、法規制による対応を検討するという方向性が示された。

 会合では、まず2015年の台風15号による太陽光発電設備への被害に関する調査結果を報告した。九州産業保安監督部が管内のすべての太陽光発電設備(出力50kW以上の3162件)の設置者、または、電気主任技術者に対し、被害状況をアンケート調査した。3009件から回答があり、その4%となる138件で何らかの被害が発生していた。このうち、発電設備そのものに被害が生じた79件については、施工状況や技術基準適合状況について追加調査した。

 79件のうち約7割(54件)で構造面での問題が発生し、約4割(35件)でパネルの脱落・飛散が起きていた。構造面で問題が発生した54件のうち、「基礎の損壊、杭基礎の引き抜け、架台の倒壊など」は13件、「架台のゆがみ・変形、接合部の外れ」が41件だった。

 特に500kW~2MW未満の設備において、大量のパネル脱落・飛散を伴う損壊が多く発生しているという。2MW以上の設備でも損壊事案の報告はあるものの、構造強度に起因する重大な損壊は生じていないことが分かった。

 設計・施工の状況に関する調査では、被害のあった79件のうち、約2割(16件)で、設計基準風速が不足、もしくは強度計算を未実施だった。調査報告では、「不適切な設計を行っている設備において、架台の倒壊などによる大規模なパネルの脱落・飛散につながっている」と、結論付けている。

 こうした調査結果を踏まえ、「特に中小規模の設備を念頭に、既存設備も含め、安全性確保に向けたエンフォースメント(法執行)のあり方を検討すべきでないか」「固定価格買取制度(FIT)認定事業者に対する実態調査も進められており、この結果も踏まえつつ、検討すべきではないか」とし、以下のような検討の方向性を示した。

 (1)技術基準の再検証、標準仕様の提示、簡易な安全対策の検討、(2)使用前段階での事前確認の強化、(3)事故報告の強化、(4)FITと連携した設置・運転状況の把握、不適合事案への対処、(5)適切な保守管理を行っている事業者に対するインセンティブーー。

 太陽光発電設備の安全確保に向けた規制の見直しに関しては、昨年12月21日に開いた電力安全小委員会の場で初めて取り上げられ、同委員会の下部組織である新エネルギー発電設備事故対応・構造強度WGで、具体的な議論を進めることになっていた(関連記事)。