スペインthe Universidad Carlos III de Madrid(UC3M)とスペインBioDan Group社などの研究グループは2017年1月23日、人間の皮膚を作製できる3Dプリンターのプロトタイプを開発したと発表した(ニュースリリース)。患者への皮膚移植の用途で、欧州の複数の規制当局で審査が進められているという。化粧品や化学製品、薬剤の評価に使う工業製品への応用も視野に入れている。

開発したシステム(出所:the Universidad Carlos III de Madridなどのニュースリリース)
開発したシステム(出所:the Universidad Carlos III de Madridなどのニュースリリース)
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 この技術では、バイオインク(Bioinks)と呼ぶ人間の細胞由来の素材を使って、人間の皮膚の構造や機能を再現した組織を3Dプリンターで作製する。表皮とその内側にある真皮、真皮の構成要素でコラーゲンを作りだす線維芽細胞といった、皮膚の各構成要素を再現可能だ。細胞などの生体材料をどのように混合し、それらの機能を劣化させることなく正しく堆積させるかなどにノウハウがあるといい、堆積工程はコンピューターで制御する。

 想定する利用形態は大きく2つ。1つは、重度のやけどを負った患者などの細胞を基に、自家移植用の皮膚を作製するという形態。もう1つは、工業製品の評価などに使える人工皮膚を細胞のストックから大量生産するという形態である。後者では化粧品や化学製品、薬剤の評価において、動物を使う評価手法が禁じられているケースなどでの利用が想定される。

 今回の成果は科学誌「Biofabrication」の電子版に掲載された。研究グループは今後、皮膚以外の人間の生体組織を3Dプリンターで作製する研究も進めるという。