東京大学と東京電機大学は2017年1月23日、柔らかい材料中に埋め込まれた硬い物質の寸法と位置を算出できるセンサーを共同開発したと発表した。肺がんの内視鏡下手術などへの応用を想定する。
内視鏡手術用の把持鉗子の先端に、MEMS(微小電気機械システム)による6軸力センサーを実装。このセンサーで算出した腫瘍寸法と術前CTによる腫瘍寸法を比べることで、腫瘍を同定する。手術中に術者が腫瘍の正確な位置を把握できるようにすることで、手術時間を短く抑え、患者・術者双方の負担を軽減する。
内視鏡下手術では一般に、触診による腫瘍の同定や位置確認が難しいことから、術前CT画像から腫瘍の寸法や位置情報を得る。ただし、例えば肺がん摘出術の場合、肺の空気を抜きしぼんだ状態で手術するため、術前に肺が膨らんだ状態で撮影したCT画像はあまり参考にならないという課題があったという。
開発したセンサーは、1.25mm角のMEMSセンサーチップを搭載。センサー表面に垂直な圧縮力、センサー表面と平行で互いに直交する向きの2軸のせん断力、および互いに直交する3軸周りのモーメントを計測できる。MEMS 6軸力センサーを埋め込んだシリコーンゴムは直径10mm/厚さ2mmと小型で薄いため、市販の内視鏡手術用把持鉗子の先端把持部に問題なく実装できるという。
研究グループは開発したセンサー付き把持鉗子の有効性を確認するため、シリコーン球を内部に埋め込んだゼラチンをセンサー付き鉗子で把持する実験を行った。ゼラチンに埋め込まれたシリコーン球の方向を推測できることが示唆されるとともに、埋め込まれたシリコーン球の直径を精度良く推測できたという。