蓄エネルギー技術の容量と放電時間
蓄エネルギー技術の容量と放電時間
(出所:「How hydrogen empowers the energy transition」)
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 トヨタ自動車など13社は1月18日、エネルギー・運輸・製造業の世界的な企業による「Hydrogen Council(水素協議会)」を設立したと、スイス・ダボスで発表した。水素をエネルギー媒体に活用した新たな社会システムに向け、ビジョンと長期目標を提唱する。

 日本からの参加は、トヨタ、ホンダ、川崎重工業の3社。このほか、エア・リキード、アルストーム、アングロ・アメリカン、BMWグループ、ダイムラー、エンジー、ヒュンダイ、ロイヤル・ダッチ・シェル、リンデグループ、トタルが参加した。共同議長会社はエア・リキードとトヨタが務める。

 ダボスで開催した第1回の水素協議会・会合には13社のCEO(最高経営責任者)や会長らが参加した。これらの企業は、2015年のパリ協定で合意された「(気温上昇を)2℃以下に抑える」という温暖化対策の長期目標の達成を目指すとしている。

 同会は、CO2を排出しないエネルギーシステムを構築するうえで、「水素」がカギとなると位置付けている。「水素関連の技術と製品は、この数年間に大きく進化し、次第に市場に投入されつつある」との認識に立っている。

 発足に関わった13社は、水素もしくは燃料電池の開発と商業化に関し、現時点で年間に合計で約14億ユーロを投資しており、今後さらに加速させていくという。2018~22年には、13社合計で年間約19億ユーロを投資する見込みという。

 同会が発足時に公表した冊子「How hydrogen empowers the energy transition」(どのように水素がエネルギーの移行を可能にするか)のなかで、1日の走行が100km以内の小型自動車には蓄電池による電気自動車(BEV)、それ以上、長距離走行する大型車には燃料電池車(FCV)というすみ分けになる、との見解を示した。

 また、「電力セクターでは、水素が再生可能エネルギーの効率的な統合に有望」とし、特に、季節を超えた長期の蓄エネルギー技術として最も有効と評価している。

 エア・リキードのブノワ・ポチエ CEOは「2015年のパリ協定は、社会を正しい方向に導く大きな一歩。協定内容を現実のものとするためには、具体的な企業行動が必要となる。水素の可能性にコミットしていくことにより、水素を中心としたエコシステムへと発展させていく大きな原動力になる」とコメントした。

 トヨタの内山田竹志会長は「水素技術とその便益を世界に示し、リーダーシップを果たしていく。水素には、運輸分野だけでなく、産業全体、バリューチェーン全体で、低炭素社会への移行を支えていくポテンシャルがある」とのコメントを公表した。