タピオカ製造時の残渣「キャッサバパルプ」でバイオエタノールを製造
タピオカ製造時の残渣「キャッサバパルプ」でバイオエタノールを製造
(出所:NEDO)
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は1月10日、サッポロホールディングスとタイInnotech Green Energy社が、年産6万klのバイオエタノール製造プラントの建設に向けた事業性評価(FS)を開始すると発表した。NEDOのFSプロジェクトの成果。

 バイオエタノールの原料には、キャッサバイモからタピオカを抽出した後に発生する残渣である、「キャッサバパルプ」を使う。

 キャッサバパルプによるバイオエタノール製造を実用できれば、世界初としている。

 両社は1月9日、バイオエタノール製造技術の提供や、プラント設計に関するコンサルティング契約を締結した。

 ASEAN諸国では、キャッサバの栽培が盛んで、特にタイは、世界最大のタピオカ輸出国となっている。キャッサバパルプの排出量も、2014年に年間260万tと推定される。この量のキャッサバパルプからバイオエタノールを製造すれば、年間約85万klの製造が可能としている。

 タイでは、2021年のエネルギー使用量に占める代替エネルギーの割合を25%とし、このためのバイオエタノールの使用量を1日9000klとする目標を掲げている。この目標の実現に寄与する技術となる。

 NEDOは、キャッサバパルプを使ったバイオエタノール事業の実用化に関して、タイの科学技術省 国家イノベーション庁(NIA)と基本協定書を締結し、2011年度から実証事業を開始した。

 従来、キャッサバパルプは、繊維分を多く含むために、バイオエタノールの原料として利用できなかった。

 実証事業では、2014年4月に、タイのサケーオ県にある、デンプン加工会社のEiamburapa社の敷地内に関連設備を竣工し、2015年11月まで実証運転を続けてきた。

 この実証事業は、サッポロビール(現サッポロホールディングス)と磐田化学工業(静岡県磐田市)に委託した。磐田化学工業は、有機酸などの機能性素材や発酵精製加工などを手掛ける企業。

 サッポロが酒類製造で培ってきた発酵技術や知見を生かし、キャッサバパルプを原料に利用できるような製造技術を実証した結果、食料と共存できる持続可能なバイオエタノール製造を実現したとしている。

 今後、サッポロは、Innotech Green Energy社と具体的な設計作業と収益性の確認を進め、プラント建設の検討を始める。タイ国内にとどまらず、キャッサバ栽培が盛んなASEAN諸国へのバイオ燃料製造技術の普及を目指す。