中間バンド型太陽電池のモデル構造と電子顕微鏡写真
中間バンド型太陽電池のモデル構造と電子顕微鏡写真
(出所:花王、東京大学、九州工業大学)
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 花王と東京大学、九州工業大学の産学連携の共同研究グループは1月11日、高エネルギー変換効率が期待される中間バンド型量子ドット太陽電池を「液相法」により作製するための要素技術の開発に成功したと発表した。

 同タイプの太陽電池を液相法で作製することに成功したのは世界で初めてという。安価・軽量・フレキシブルで高効率な太陽電池の研究開発を加速させる成果という。

 中間バンド型量子ドット太陽電池は、バルク(母体)半導体中にナノサイズ半導体(量子ドット)を高密度に充填したナノ構造体(光吸収層)から構成される。このナノ構造体は従来、超高真空下で基板上に原子1層ずつの単結晶膜を成長させるエピタキシー法などの「気相法」で作製されてきた。しかし、材料の制約や設備負荷などの点で安価で製造するには課題があった。

 研究グループは今回、量子ドット(硫化鉛)の表面にヨウ化物イオンを配位させることで、ペロブスカイト前駆体(メチルアミン臭化水素塩、臭化鉛)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に量子ドットをナノレベルで分散・安定させたコート液を調製。このコート液をスピンコート(液相法)することで、ナノ構造体(光吸収層)を基板上に結晶成長させた。

 作製したナノ構造体は、ペロブスカイト(臭化鉛メチルアンモニウム)バルク半導体中に平均粒径4nmの量子ドット(硫化鉛)を高密度に充填したもので、中間バンドを形成した設計通りの光吸収層であることを確認した。また、この光吸収層を含む太陽電池が中間バンド型太陽電池として機能していることを確認した。

 シリコン系などの汎用太陽電池のエネルギー変換効率の理論限界(最大理論変換効率は約31%)を超える太陽電池を、安価・軽量・フレキシブルで製造できれば、メガソーラーや住宅用だけでなく、充電不要の電気自動車(EV)やモバイル機器など、さまざまな用途に適用できると期待される。