半導体製造の国際会議「ISSM (International Symposium of Semiconductor Manufacturing) 2016」(ホームページ)が、2016年12月12日~13日に東京・両国KFCホールで開催された。 このところ、あまり人気がない半導体関係の学会。ISSMも同じ状況で、参加者数がここ数年は減少していた。が、今年は、参加者が増加して、再び活況を呈し始めた。日本の半導体の新しい方向性を予感させる出来事と言えよう。

図1●ISSM 2016の概要と、200mmウエハー製造ラインに関する基調講演の登壇者 ISSMのスライド。
図1●ISSM 2016の概要と、200mmウエハー製造ラインに関する基調講演の登壇者 ISSMのスライド。
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 ISSM 2016の基調講演や口頭発表(一般論文)では、ビッグデータ収集システムや、IoT(Internet of Things)、AIと言った話題の技術を既存の製造手法に取り込んで、新しいマーケットを開拓しようという動きが見えてきた(図1)。温故知新的発想とでも言うべきだろうか。残念ながら先端微細化では、グローバルマーケットの中では立ち遅れている日本の半導体産業。なにをどうやって作っていけば未来があるのか。製造業の根本的命題とも言うべき考え方に, 原点回帰していくのではないかという期待を持たせる内容だった。

再び脚光を浴びる200mmウエハーライン

 この観点から、注目した2つの基調講演の内容を以下で報告する。両方とも200mmウエハー製造ラインの話である。「なに?今さら200mmだと」と思われるかもしれない。300mmから、450mmという話もでてきている今日。まるで前世紀の遺物的話じゃないかと言うことなかれ。今、200mmのラインが"熱い"のだ。

 2つの基調講演はともに、ヨーロッパのウエハー製造ラインに関する話である。300mm先端微細化ラインには 役不足なニッチなマーケットに狙いを定めて、必用なときに必用なものを必用な分だけ供給すると言うことを原則に、これらのラインでは、アナログや車載向け製品を作っている。このような分野は、現在、需要が活発で、ほとんどの200mmの製造ラインは数年先まで予約が満杯だという観測が有力だ。

 200mmのラインは、装置は古く、技術は枯れており、歩留まりは安定しているため、「これ以上の変化は避けて安定して操業を続けていく」という方針の半導体メーカーは多い。しかし、ヨーロッパの半導体メーカーの中には、独Robert Bosch社やオーストリアams社のように、歩留まりだけでなく 、品質の改善や製造コストの大胆な削減を目標として掲げ、200mm製造ラインの自動化、最新プロセスコントロール手法への投資を数年前より継続してきた企業がある。

 以下の2件の基調講演の200mmラインでは、イノベーションにより、常識を覆すほど生産性を改善し、生産コストを大幅に下げた。既存の手法では、製造コスト面でアジアのファウンドリーにとても太刀打ちできないため、イノベーションを取り入れたという。聴講していて、「ヒット商品を提案する、納期を守る、製品品質を上げる」という、製造業としての大原則を貫く姿勢を目の当たりにしたと感じた。野心的な取り組みであり、工夫された改善を行っており、今後も注目したい事例である。