SiCパワー半導体の用途別市場規模(単位:億円)
SiCパワー半導体の用途別市場規模(単位:億円)
富士経済の予測をもとに日経テクノロジーオンラインが作成
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 市場調査を手掛ける富士経済は、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体の世界市場を調査し、SiC/GaNの合計で市場規模が2025年に2016年の8.5倍まで拡大すると予測した。SiC/GaNを用いるパワー半導体は、2016年の市場規模が219億円だったのに対し、2025年は1860億円まで拡大するという。

 Siパワー半導体は、2016年の2兆4020億円に対し、2025年は約22%増の2兆9239億円に成長すると富士経済は予測した。また、「次々世代」と位置づけられる酸化ガリウム系のパワー半導体も、現在は研究開発レベルだが、2025年には700億円ほどの市場が立ち上がるとの予測だ。

 SiCパワー半導体は、6インチウエハーの本格投入が始まり、2017年以降は参入各社が販売に注力するとみられる。また、主要各社でウエハーの大口径化やトレンチ構造の導入などが進み、低価格化の進行が予測される。

 SiC製ショットキバリアダイオードは、2016年の市場規模が170億円ほどで、今後も堅調に拡大するという。市場が立ち上がって間もないSiC製FETは、DC-DCコンバーターやインバーター、太陽光発電システム用のパワーコンディショナー(以下、パワコン)などに採用され、2016年の市場は35億円となった。

 用途別に見ると2016年は、情報通信機器分野の需要が最も大きく、特にサーバー用電源、UPS、ストレージなどの力率改善回路向けが多い。次いで大きいのが新エネルギー分野で、パワコンなどの需要を獲得している。自動車・電装分野では、急速充電スタンドや車載充電器に採用された。駆動用インバーターは実証が進んでおり、2020年以降に実車搭載が活発化するとみられる。

酸化ガリウム系は2018年頃に量産開始

 GaNパワー半導体は、200Vまでの低耐圧領域を中心に市場が立ち上がった。2016年の市場規模は14億円。今後は中高耐圧領域での製品系列拡大や参入企業の増加により市場が活性化していく。

 用途別にみると、2016年は情報通信機器分野の需要が一番大きく、DC-DCコンバーター、POLコンバーター向けが最も多い。新エネルギー分野ではパワコン、民生機器分野ではパワーアンプなどの高級オーディオ製品で需要を獲得している。

 酸化ガリウム系パワー半導体は、実用化に向けた研究開発用にエピウエハーなどの作成が進んでいる。2018年頃に量産が始まり、2020年に10億円程度の市場規模になると予測される。

 2023年頃からSiCパワー半導体に対する優位性が際立ってくるとみられ、2025年には市場規模700億円が予測される。600V以上の中高耐圧向けで採用メリットが大きく、鉄道や電力送電線などのインフラへの搭載や、過酷な超高温環境下で使う地下資源の掘削機械向けで有望視されている。