経済産業省は12月21日、産業構造審議会 保安分科会 電力安全小委員会(第11回)を開催し、太陽光発電設備の安全確保のための取り組みの強化などについて議論した。

 太陽光発電設備は、出力規模に応じて、電気事業法による保安規制が定められている(図1)。

図1●出力規模と電気事業法における保安規制
図1●出力規模と電気事業法における保安規制
(出所:経済産業省)
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 ただし、固定価格買取制度(FIT)による認定件数が最も多く、約163万件(出力10kW未満が約85万件、同10~50kW未満が約78万件)に達している出力50kW未満では、技術基準適合維持義務は課されているものの、保安規程への対応や、電気主任技術者による保安管理、工事計画の届出、事故報告などの義務は課されていない。

 また、出力50~2000kW未満でも、工事計画の届出は課されていない。技術基準適合維持義務のほか、保安規程への対応、電気主任技術者による保安管理、事故報告などの義務は課されている。出力50~2000kW未満も、約3.3万件が設備認定されている。

 こうした規制の緩い規模の案件は数が多く、稼働済みの発電設備の中には、設備の損傷や周囲への被害といった事故を引き起こした例が出てきた。報道によって広く知られ、社会問題化した例もある。

 今回の小委員会では、太陽光発電設備に関わる近年の事故などの状況が紹介された(図2)。事業用の太陽光発電設備による重大事故、例えば、感電による死傷、出力500kW以上の設備の破損等といった事故の報告は僅かだった。

図2●敷地外にまで被害が及ぶ事故が相次ぐ
図2●敷地外にまで被害が及ぶ事故が相次ぐ
(出所:経済産業省)
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 2004年度~2011年度は0件、2012年度は8件、2013年度は4件といった具合である。 2013年度の4件の内訳は、落雷によるパワーコンディショナー(PCS)の故障が2件、雪による架台の破損が1件、作業中の感電による負傷が1件となるなど、発電所内に被害がとどまっていた。

 ところが、ここにきて、自然災害に伴い、太陽光パネルが周辺に飛散したり、架台の倒壊、設備の水没といった、敷地外の周辺地域の安全に影響を与える重大事故が発生している。その例として、2015年6月の「群馬県における突風被害」、同8月の「九州における台風15号による被害」、同9月の「鬼怒川の決壊被害」を挙げた。このうち、鬼怒川の事例については、調査中としている。

 特に、事故報告の対象外となっている、小規模の設備の損壊事故が顕在化していることを問題視している。