ルネサス エレクトロニクスは2015年12月2日、高度な車両制御に対応する車載SoC(System on a Chip)である「R-Car H3」のサンプル出荷を開始した(図1、ニュースリリース)。同製品は半自動運転車の普及が期待される2020年頃の車両搭載を想定したもの。同社の車載情報システム向けSoCである「R-Car」シリーズの第3世代製品である。従来品「R-Car H2」では、車載情報システム向けだったが、R-Car H3ではADAS(先進安全支援システム)や自動運転の機能にも対応させた(関連記事)。2018年3月に同製品の量産を開始し、2019年3月には月産10万個を計画している。

図1 R-Car H3(左)とSiPモジュール(右)
図1 R-Car H3(左)とSiPモジュール(右)
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 自動運転では、運転に必要な「認知」「判断」「操作」をクルマが代行する。R-Car H3は、認知から操作までに必要な情報を処理する機能を担える。自動運転車では車載カメラやミリ波レーダーなどの各種センサーや通信機器から得る情報量が増える。それを見越してデータ処理能力を充実させた。処理能力の向上は、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)でも重要になる。自動運転車では、外部環境や自動車の操作情報を車載情報システムに分かりやすく表示する必要があるからだ。

 R-Car H3は、英ARM社の64ビットCPUコア「ARM Cortex-A57/A53」を4個ずつ搭載し、従来から性能を1.6倍に高めた(図2、3)。認識処理には、ルネサスの並列プログラマブルコア「IMP-X5」を用い、認識処理性能を4倍に高めた。

図2 R-Car H3のシステムブロック図
図2 R-Car H3のシステムブロック図
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図3 R-Car H3と従来品(R-Car H2)の性能比較
図3 R-Car H3と従来品(R-Car H2)の性能比較
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 3Dグラフィックスコアとして演算処理性能が従来比3倍の英Imagination Technologies社製の「PowerVR GX6650」を採用した。複数のアプリケーションを同時に動作させるためにメモリバンド幅を同4倍の50Gビット/秒に拡張。動画処理性能を同2倍の500Mピクセル/秒にしたルネサス製ビデオコーデックを採用した。R-Car H3は、SoCにDDRメモリーを接続したSiP(System in a Package)モジュールも用意する。